この4月から月曜22時45分に移動したNHKよるドラ枠で全8回放送された30分ドラマ「きれいのくに」。
おそらく40代の子どもがいない夫婦(平原テツ・吉田羊)。
ある日から急にどんどん若返る妻に戸惑う夫と若返りを全く認識しておらず夫に苛立つ妻。
CG等で若返らすのではなく吉田羊→蓮佛美沙子→小野花梨と3人1役で妻を演じる。
見た目は変わるがその言動も雰囲気も吉田羊のまま(凄いっ!)。
この妻と夫の認識の差異は夫婦外の男女も同様のよう。
(特に男性から女性へ多く見られる根強い年齢や外見への差別の象徴?)
そして物語は妻の過去の恋愛なども絡みながら...
どことなくイキウメの「散歩する侵略者」(の逆な)肌合い感じつつ、どこ向かうの?って心踊る不穏に魅かれ第3回。
実はこれは劇中劇、高校で授業中視聴されていた教材映像だったという。
本編。近未来日本。
ほとんどの大人が“同じ顔”(男性は稲垣吾郎・女性は加藤ローサ)という日本(世界はどうなのか不明)。
整形技術や遺伝子操作の進化で皆がトレンド顔になれる時代が続くもそうした行為が法律で禁じられた日本。
(一方で数少ない無整形/プレーンな大人は密かに公然と差別されているし闇の整形もあったりする)
そんな不条理な国で生きる5人の高校生の青春群像。
こんな尖った(難解な)設定を饒舌に説明することなく映像的に描きながら、生々しい会話・ムードでドラマは物語られる。
揺れ惑う心情が見え隠れする。
援交相手に襲われ大人(の顔)にトラウマ植えつけられた女子(岡本夏美)。
彼女に好意抱くも、大人と似た顔のため(遺伝子操作ベイビー?)悩む男子(秋元龍太郎)。
二人の悩みを知り心砕きつつ女子に好意抱いていくムードメイカーな男子(山脇辰也)。
お隣同志幼馴染の男女(青木柚・見上愛)。
お互い好意抱くもはっきりせず、男子はトラウマ女子と怪しくなったり。
女子の方はそんな男子の好きな顔になりたいというコンプレックス抱きつつけて“密航”を企てる。
男子はそんな女子の顔を全然嫌いではなく、むしろ両親との色々もあり容姿へのこだわりを恥ずかしく思っていて...
5人は放課後いつものカラオケボックスで懐かしの昭和歌謡曲を歌う。
人は人のどこを魅力に思うのか。
本音と建前。
容姿差別。
コンプレックス。
人の価値。人の価値観。
様々なテーマを浮き彫りにしつつ、迷い悩みながら身に余る衝動とともに前に進もうとする若者にエール贈る作品。
とても映像的なのだけど連続ドラマでも映画でもなく舞台劇の味わい強い不思議な感覚。
「デリバリー姉さんNEO」「本気のしるし」にも通じる興奮の作品体験。
めちゃ魅力的なSF青春ファンタジーです!
脚本:NHKのディレクター陣に混じり演出も手がけた加藤拓也(凄い!)
劇伴:蓮沼執太
制作統括:訓覇圭
6月2日現時点でまだ最終回迎えていませんが、
今期は本作以外にも「大豆田とわ子と三人の元夫」「生きるとか死ぬとか父親とか」「コントが始まる」「あのときキスしておけば(←きれいのくにと通底するテーマ性興味深い)」「リコカツ」...とてもおもしろい作品揃いです。