マストタンクが作られる前の僅かな数年間のみ製造された文字盤に"must de"が入らないカルト的な人気を誇る希少なプレマストタンクです。
そしてヴィンテージウォッチの【滅びの美学】を証明する強めのエイジング仕様は、他人とは絶対に被らない唯一無二の時計となります。
こちらの時計は1970年代初頭に製造されたプレマストタンクで、カルティエが製造する様々なモデルの中でも詳細な資料が少なく、"カルティエのミステリーウォッチ"と言われているプレマストシリーズの一点です。
【プレマストタンクの歴史】
"プレマストタンク"はマストタンクシリーズの時計がリリースされる(1977年以前)前の1970年代初頭にかけて製造されました。
1919年にタンクノーマルをリリース、1922年にタンク・ルイ・カルティエをリリースしていたカルティエ社は、それまで富裕層向けのジュエリーメーカーであったところを、1973年から矢継ぎ早にルイ・カルティエコレクション"と称した12種類ほどの時計バリエーションを展開しています。
【タンク・ルイ・カルティエとの共通点】
わたしのプレマストタンク、、
なんと1919年初代タンクノーマル、1922年初代タンク・ルイ・カルティエとの共通点がある希少なモデル。
両サイドの戦車のキャタピラに模したケースの肩が下がる点は最もそれを証明するものです。
わたしはプレマストタンクも量産型マストタンクもどちらも所有しているので、その差がよくわかりますのでご説明します。
※上のプレマストタンクは肩が下がります
※下の量産型マストタンクは肩が丸みを帯びます
上下は同じタンクシリーズですが上はケース形状がタンクアロンジェ型(コンコルド型)とも呼ばれる生産個体数の少ない希少性が高いタイプ。下は丸みを帯びた現行型のタンク型(キャタピラ型)大量量産品となります。
一部ネット情報には米国向けに製造されたプレマストタンクは肩が下がっているや、裏蓋のロゴ刻印が手書きロゴになっているものが米国向けなどと間違った情報を流されている人もおります。コンコルド型は非常に希少性の高いプレマストタンクになります。
ヴィンテージ時計を販売してるお店がそのような偽情報を流布しているので、いただけませんね。
初期のタンク・ルイ・カルティエに見られるケースの肩下がりと手書き刻印は初代タンク・ルイの一つの特徴になります。
(米国向けということではありません)
※米国向けかどうかはシリアルナンバーの数字で表されます。
ダイアナ妃やモハメド・アリ、アンディ・ウォーホルやジャクリーン・ケネディが"タンク・ルイ・カルティエを装着してる当時の写真を見ていただければわかりますが、(合成ではなく実際に装着してるもの)キャタピラケースの肩は下がり、先端が少し鋭角になり、量産型マストタンクのように丸みは帯びておりません。
また、白文字版、ケース横ネジ穴なしのスナップバック、プレマストタンク製造初期の特徴といえる砲弾型サファイアカボションリューズ、ケース裏のGOLPLATED刻印なし、製造番号なし(製造番号は裏蓋の内側への刻印あり)が特徴として挙げられます。
裏蓋下方SWISS刻印の横とケース横12時位置には"SC"のホールマーク刻印とヴェルメイユ加工20ミクロンの刻印が入っています。この刻印の意味は錫(スズ)コバルトメッキに金20ミクロンの厚さで加工しているという意味です。
SWISS SCや SC 20という刻印があります。
これは
「SC」は、スイスにあったケースメーカー(もしくはサプライチェーン業者)のイニシャルです。
特にこの時期のカルティエでは、**Schwob Frères & Cie(シュウォブ・フレール)**という老舗ケースメーカーが関わっていた可能性があると言われています。ケースにSC刻印のあるプレマストタンクは非常に希少性の高い逸品です。
こちらの商品はさらにこの下地に20ミクロンの金を何層にも重ねて塗り上げているヴェルメイユ加工です。
量産型マストタンクの金メッキに対して、初期型タンク・ルイ・カルティエに酷似した最初期のプレマストタンクは、メッキ色がイエローゴールドに近い色調に調合されており、金メッキというよりは18Kに近い色目をしているのも特徴の一つです。
まさにカルティエ社が1970年代初頭に金の塗装について試行錯誤していたのがうかがえる貴重なケースです。
【エイジングされた個体】
量産型マストタンクの形状に酷似した"プレマストタンク"も存在しますが、希少性が最も高いものは今回ご紹介した1922年"タンク・ルイ・カルティエ"に酷似した最初期のプレマストタンクです。
こちらの"ボンファイヤースパイダー"はまさに初期のタンク・ルイ・カルティエの形状を引き継いだ大変希少な個体となります。
半世紀以上の時を刻み、経年劣化を楽しむ"味のある個体"です。
おそらくこのような特徴あるプレマストタンクの個体は時計中古市場でも、もう出てこないのではないでしょうか。
裏の刻印は手彫りで「Cartier」。初期プレマストタンクのみに見られる仕様となり、大変希少価値が高く取引されています。
時計針はバトン針が使用されています。当時ものの青針は現行のものよりも、より濃い青となります(黒に近い)。
個体についてはスーパーミントコンディションには程遠い状態ですが、それなりに半世紀の憂いを秘めた唯一無二の個体であると考えます。
ダイヤルにはスパイダークラックがあり、かなりのエイジングが見られます。また金が溶けて文字盤に侵食する様がみられ、あたかも燃え盛る金箔の炎が白い焚き木を覆い尽くしていくような様であり、金箔が織り成す"ボンファイヤー(焚き火)"のようです。
ケースは50年以上の歳月をより感じられるよう、仕上げず風防傷や酸化皮膜をあえて残しております。
裏蓋には"レインドロップス"が見られ、雨粒のような模様がまさに半世紀以上もの切なくも愛おしい褪色として、降り注いでおります。
"レインドロップス"、"スパイダー"、"ボンファイヤー"がプレマストタンク最初期のその歳月を誇るかのようにエイジングされています。
"レインドロップス"、"スパイダー"、"ボンファイヤー"が共存する個体、、、
これはこれで素晴らしく愛おしい造形であり、他人のどれとも被らない唯一無二の自然の結晶です。
ベルトはクロコダイル製でカルティエ純正のものを使用しています。Dバックルはこちらもカルティエ純正のものが装備されておりますので、そのオリジナル性をお楽しみ頂けます。
カルト的な人気を誇るプレマストタンク。ヴィンテージテイストとエレガンスの両方を兼ね備えたこちらは、他人と被りたくない方、セカンドタンクを遊びとして持ちたい方、本物嗜好の方にも満足いただけるこだわりの逸品です。
【自国パリ市場向けの個体】
マストタンクが登場する1977年以前の製品は、ファンの間でプレマストと呼ばれています。1972年頃に経営危機に陥ったカルティエは創業家経営に終止符を打ち、現在のリシュモングループ傘下に入ることになります。
1973年頃から"ルイ・カルティエコレクション"と称し、現リシュモン傘下となったカルティエ社は腕時計を量産し始めました。
今となっては廃盤となったミステリアスな作品を多く製造しました。またその形状、表示や刻印のバリエーションには様々なものがあったと言われています。
ネット上には先程も挙げたような不確かな情報が流布されていたり、未だ解明されていない謎の多い分野です。
富裕層の"タンク・ルイ・カルティエ"を一般層向けに改良して発売日したマストタンク。
僅か数年後しか製造されなかった初期のマストタンクをプレマストタンクといい、こちらのプレマストタンクは更に少量しか生産されなかったヨーロッパ市場向け(パリ市場)に製造されたプレマストタンクになります。
裏蓋SWISS刻印横のSC刻印と裏蓋のシリアルナンバー最初のE(EUROPE)がそれを証明しております。
また、自国のみの販売のため、輸出入に関する関税が一切かからなかったということで、裏蓋には関税のホールマークがありません。
これも自国パリ市場向けの個体ということを証明しています。その後、量産型欧州向け、米国ニューヨーク市場向け、英国ロンドン市場向け、アジア市場向けなどで18KやSV925を使用したりする個体が増え始めます。
また、ムーブメントは当時現行オリジナルETA2512を搭載しております。ケース裏蓋内にはETA2512刻印の横にPY刻印があります。
「P.Y.」=Pierre Yves(ピエール・イヴ)という、当時カルティエが使っていたサプライヤー/工房コードと考えられています。1970年代のカルティエ(特にロンドン製、パリ製)は外部の複数のサプライヤーと協力してケースやムーブメント、組み立てを行っていました。その証拠として部品にイニシャルコード(例:PY,JC,EJなど)が刻印されている個体があります。当時モノを表す非常に希少性高いムーブメントで、このPY刻印はその一つで「制作・検査・提供した工房または技術者」を特定するためのものです。特に当時のカルティエはロンドン、パリ、ニューヨークで別々に製造・管理していたため、こういったマークが必要でした。
ETAベースでもカルティエが公認でカスタム依頼したムーブメント(「PY」刻印)は超最高評価!
ピエールイヴは名前からも正真正銘のパリ仕様ということの証明にもなります。
これが当時現行のままのムーブメントを搭載した正規品本物ということを表す一つの指標にもなります。
また、パリ市場向け仕様は基本的な造りが初期タンク・ルイ・カルティエとほとんど同じになっており、キャタピラケースの肩が下がります。
大きな違いとすればケースが18金ではなくSC製
ヴェルメイユ、また文字盤の表記がブロック体ではなく筆記体の違いです。
ケースの肩が下がるのは1920年代のタンクノーマル形状まで遡ります。
1920年代のタンク・ルイ・カルティエはやはり肩が下がります。
※キャタピラケースの肩が下がっています。
一方1970年代のタンク・ルイ・カルティエは肩が下がらず、丸みを帯びています。
※肩が下がっていない。
タンク・ルイ・カルティエか高騰してる今、お勧めの一品です。タンク・ルイ・カルティエとの類似点が多いミステリアスな個体です。
以上











































