通し狂言「世界花小栗判官」を終えた歌舞伎役者・尾上松緑丈が
2週間前にブログで、アニメ「ポプテピピック」について言及してた。
「凄くて、いい意味で酷い」と、ある。興味を引き、僕も拝見した。
これは歌舞伎だと思った。主役が二名で、数分の狂言を同内容で
繰り返し、つごう二回上演で、それぞれ別の声優が配役をつとめ、
計四人のメインの声優が自慢の喉を披露する趣向だと分かった。
面白かった。だがしかし、笑ったのでは無く、興味深いと思った。
スケルトンの競技コースを、ペンギンの親子が横切り、ライバルチームが衝突して大惨事となった筈だが、事後報告もせず、実況アナウンサーが「ペンギン親子の安否が気がかりです」と、述べたにとどめバッサリ切りくだりは、歌舞伎だと思った。さっきまで敵対していた男女が、持ってたお守りに入った手紙を証拠に、生き別れになっていた兄妹だと発覚し、ひっしと抱き合い「会いたかった~」
とさんざんに涙した挙げ句に、激しい切り合いの続きなぞ無かった
かのように、拍子木たからかに定式幕が引かれて容赦なく終演にブチ込む、あの時のようなカタルシスに耽った。
スケルトンのコーチが女学生の頃、土砂降りの中で濡れネズミの子犬に愛情を注ぎ込む様を、のちに選手となる同級生が目撃し、子犬に話した「スケルトン知ってるか?やってねぇ奴、ダセぇよな」のセリフに感化されたのが、スケルトンのクールランニングの助走となったくだりが、お涙頂戴に当たるのだろう。確かに、かっけぇ…
だが、感化のあとの行動がイケない。もっていた傘をポロリと道に落とし、ソッコーで帰宅したか図書館にでも行って、スケルトンを調べるなぞするという描写と分かる。犬を拾って猫まっしぐらなのか。
傘を放置して走り去るのはよくない。濡れるをいとわずスケルトンに一直線になることを表現するなら、傘を放置せず、濡れることを気にせず傘をすぼめ、切っ先を前方に、作画が可能なら頭部を傘の内側に押し込み、斜め方向に引っ込む画にした方が良い筈だ。空気抵抗を巧みにかわすのが特徴のスケルトンが、より伝わる。
これは歌舞伎だ。
ダブルキャストで同じ狂言を魅せる趣向だ。
奇しくも、きたる二月に東京は銀座木挽町の歌舞伎座において、二代目松本白鸚・十代目松本幸四郎・八代目市川染五郎の三代同時襲名披露で「仮名手本忠臣蔵 七段目 祇園一力茶屋の場」が出るのだが、華を添える主要役ふたりがダブルキャストだ。主役の大星由良之助は、二代目白鸚が全日をつとめ、主要ふた役の
遊女お軽と寺岡平右衛門をダブルキャストで、
| 〈偶数日〉 遊女お軽 寺岡平右衛門 〈奇数日〉 遊女お軽 寺岡平右衛門 |
菊之助 |
…となっている。二月一日が初日で奇数日なのに、偶数日からの記載になっているのが実に歌舞伎である。誰も突っ込めないぞ!
ダブルキャストの趣向を楽しむアニメだから、「ポプテピピック」に興味をもった方に、ぜひに歌舞伎をおすすめしたい。高麗屋~!
http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/542
