名古屋の演劇界で活躍する、僕の大好きな役者さんが、独り芝居を打つ。
奇しくも女優と男優の両雄と思う方が力作を出すので、二倍楽しめそう。
ひとりは今夏の大須オペラで活躍した女優さんが、3月25日、26日に「ひとり芝居」を。
一人は元・劇団シアターガッツの藤元英樹さんが、10月18日、19日に「一人芝居」を。
僕も書き方を変えて冒頭に「独り」と付けたが、表現の差異があるのも面白い。

まずは女優さんが上演するのは「須磨子という名の正子」という作品だ。
4年前、名古屋で初演した、女優・松井須磨子を扱った、いい芝居だそう。
演出家の島村抱月と芸術座を立ち上げた女優で、松田優作が出てた映画
「華の乱」で松坂慶子が演じた人だとか。女優が女優を演じる意欲作だ。
3月25日、26日に岐阜市文化センターでキャパも大きく上演を敢行する。
http://www.hi-you-can.com/sumako.html

この女優さんの芝居を、大須オペラはもちろん大須師走歌舞伎の客演を核
に、先日の喜多方演劇フェスを沸かせた「ぼくらはみんな生きている」まで
数々の作品で観ている。おおまかな印象は、端正な芝居をされるという事。
「パロマの前夜祭」では怪演と捉えられるかもしれないが、役をきっちり
生きているだけで、切れ味鋭い演技をする方のように思う。歌舞伎に例え
ると、いまの尾上松緑の父君の、初代尾上辰之助のイメージが近いと思う。
ナイフをチラリと見せるような迫力を醸し出す芝居を、体感したいものだ。

男優の藤元英樹さんの公演は、10月18日、19日に、ひまわりホールで。
自身の一人芝居の企画で「ゴールドスケープ」を立ち上げ、今回で三作目。
深夜のラジオDJを演じた「ミッドナイト ボン!ボン!」と、警備員に
扮した「伝説のガードマン」の前2作は、一人で居る事が自然な役柄だが、
今年の新作は「ヒーロー親子」だ。親子ゆえ二人を演じ分けるのだろうか。
ヒーローといえばガッツの「レインボー・ミラクル・チェンジ!」でヒーロー
俳優を可笑しくも哀切たっぷりに演じた方だけに、題だけの想像だが、
一人芝居での熱演が楽しみ。また初作の劇作家・品川浩幸氏の世界観、
二作目の自筆の独自観を経て、劇団を離れての一人芝居の入魂の作品だろう。
http://www.gold-scape.com/

話の流れで、藤元さんも歌舞伎に例えるなら、う~ん誰だろうと考えると、
市川團十郎かなぁ、大らかでスカッとしてスコーンと突き抜けた感じかと。
すごく劇画的な風貌と演技だと認識している故、荒事の総帥の成田屋かな。

さらなる話の流れで、二人に割って入る「止め女」的な存在を加えるならば
やはり歌舞伎で言うと、女形を演る尾上菊五郎が必要。総合劇集団俳優館の
中田裕子さんに、金子みすずの一生を描いた「わらべは、みたり」を上演し
てもらえば、名古屋の三人三様のソロ・アクトが楽しめるのではと思います。
http://www.hi-you-can.com/warabe.html