初めて観たシネマ歌舞伎について書く前に、まず7月7日にNHK名古屋
で拝見した、ジャズボーカリスト大城蘭さんのライブ&トークの一場面を
http://hats.jp/p/artist/?artist=10000011

司会者「テレビ出演は初めてだとか…?」
蘭さん「そ~うなんですよォ~」

蘭さん「(楽器では)さみしぇん をやったり…」
司会者「あぁ、三味線ですね。沖縄ではそういうんですね」

そう、これを観ていた時に、浮かんできたのは玉三郎丈と段治郎丈です。
それが「ふるあめりかに袖はぬらさじ」を観て僕が受け取ったことです。

玉三郎丈が演じる三味線芸者お園の、最も印象的な台詞というか語り口調
は、いかなる客が御託を並べても「そ~うなんですよォ~」と自分の世界
に引き込む逞しさで、僕も見習い日常生活に採り入れたいと思いました。

段治郎丈扮する思誠塾・多賀谷が芸者お園をどやしつける時の口のきき方
「おい、三味線!」もツボにハマりました。弾いている楽器の名前で呼ぶ
のはオーケストラの指揮者でやりそうですね。「古畑任三郎」の市村正親
さんが橋本じゅんさんに「おい、クラリネット!」とやってましたよね。

その人が扱う道具を呼び名にするって面白いですよね。例えば書類に捺印
するだけの飾り物のくせにイヤミったらしい課長には「おい、ハンコ!」
と心の中で毒づいて笑い飛ばせばいいんですよ。そんな事を思いました。

あと気に入った台詞は「抜き身(?、刀のこと?)が怖くって刺身が喰え
るかってんだ!」で、「白浪五人男」で鳶頭清次が「二本差しが怖くって
焼豆腐や田楽が喰えるかってんだ!」で、日本語はいいなと感じました。

役者陣とくに玉三郎丈の演技が素晴らしいのは、言うまでもありませんが
ラスト5分ほどの、お園の酒の呑みっぷりは素敵だったです。観る観客も
酒が飲みたくなる演技とは違うと思いましたが(人それぞれかも)、酒で
も呑まなきゃやってられねぇよな~と感じる飲みっぷりだったようにお見
受けしました。手ひどく振られた後にドレスのままでシャワーを浴びる様
な感覚とでもいいましょうか。悲しいだけでなく、自分、よくやったよね
と、目が覚めたら褒めちゃうのでは? 酒のつぎ方が、2本の銚子を一気
に空けるのは「勧進帳」の番卒の様だとツッコミを入れたくなりました。

この芝居は昨年12月に歌舞伎座で観ましたが、体調を崩してほぼ3分の2
はロビーの長椅子で横になっていて、漏れ聞こえてくる音声のみを楽しん
でいました。その事もあり、シネマ歌舞伎として記録して再現してくれる
のは、とてもありがたいことだと思いました。歌舞伎や舞台、あるいは何
でもナマで観るものだ!とおっしゃる方もいましょうが、映像技術を駆使
した舞台表現もいいものです。例えば七之助丈の亀遊が恋人の藤吉を無言
で見つめる場面でのアップは、「七之助丈って、こんなに綺麗だっけ?」
と思ったし、玉三郎丈は「虐げられた女郎が窓の外に見る世界は綺麗にし
たいから、遊郭の窓から見える景色は美しく創りました」と述べており、
確かに窓から差し込む光の神々しさや、洋館の上に亜米利加国旗があるの
がハッキリ判って、物語の背景をまさに「背景」で描いていましたよね。

初めて観ましたが、シネマ歌舞伎もいいものですね。次回作は昨年10月に
中村勘三郎丈が新橋演舞場の奮闘公演で出した「人情噺文七元結」です。
http://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/bunshichi/index.html

僕はこの芝居は演舞場で観ておらず、浅草平成中村座が印象に強く残って
ます。詳しくは書きませんが、勘三郎丈が花道を駆け去っていく場面をど
の様に映像化するかに一番興味が湧きます。涙出ましたもの格好良くて。

あと「三人連獅子」もシネマ歌舞伎になるという予告映像も流れました。
なるほど、この位置から角度から撮影するのかと、目からウロコでした。
全編驚きの連続まではと思いますが、見応えある映像になると思います。

う~ん、その時の都合もありますが「文七元結」は観たいなと思います☆


「ふるあめりかに袖はぬらさじ」は芝居の醍醐味と日本語の美しさを満喫
できる逸品だと思うので、漫喫1店に1枚置いて欲しい作品です。新刊本
を図書館に寄贈するように、松竹さん、漫画喫茶にいくらか寄贈しよう!

「ふるあめりかに袖はぬらさじ」は歌舞伎チャンネルで放映されることを
祈ります。ちなみに伝統文化放送で録った、女形の英太郎さんがお園を演
じた同作の新派アトリエ公演の映像を持ってます。近々観るつもりです。

大城蘭さんの歌を電波越しにご一緒できて、嬉しかったです。
尾上菊之助丈が演じた「若き日のゴッホ」を見せたいけれど映像が無く、
10月顔見世の「修善寺物語」を待つことにしようと思ってたので、ひょん
な処でヴィンセントを共有できたかと思い、ひとつクリアした感じです☆

http://hw001.gate01.com/otherleaves/voice_2/m02_004.htm
http://www.wallpaperlink.com/bin/0703/03200.html

今日ぞ命の明け方に 消ゆる間近き星月夜 その名も赤星十三郎


尾上菊之助さんはゴッホの役づくりのためにオランダに行った時、ゴッホ
美術館で「ひまわり」を観て、あまりの感動に動けなくなったそうです。

半面、市川海老蔵さんは美術館に行ったことがないそうです、何か絵に負
けるような感じがするとかで。彼はパリ公演の時に気が変わってルーブル
美術館に行ったけど、休館日で結局は入れず仕舞いになったのだそう。

いろんな人がいるから、歌舞伎は面白いんだよね~☆


尾上菊之助丈が絵に対する豊かな感受性を持ち合わせている様子はテレビ
のコメントで感じられましたし、現代劇「若き日のゴッホ」で、ゴッホが
年上女性との恋愛を卒業し、創作の新たなステージに踏み出す瞬間の演技
は素晴らしいと思いました。絵の人が絵描きを演るのはいいことだなと。

ただゴッホを、ゴッホの絵を好きな方が「菊之助がァ?」と訝しがるのは
目に浮かびます。僕はゴッホをほぼ知りませんが、きっと故・尾上辰之助
が演ると似合うのかもしれません。ヒリヒリする、ナイフの様な彼かと。

現・市川海老蔵ではないんですね。何というか、彼は「ハンマー」かな。

それはさておき、
海老蔵は新之助時代に「若き日の信長」を御園座!でやっており、その後
歌舞伎ではないが「信長」を演りました。だから、「若き日のゴッホ」を
演った菊之助は「ゴッホ」を演るべきだと思うのです。冗談じゃなくて。

ちょうど名古屋御園座では10月の顔見世で中村富十郎丈が「修禅寺物語」
を出されるので、それを観た感想をまじえて、菊之助丈にファンレターを
出したいなと思うのです。「ゴッホ」をいつか演られては如何ですかと。

桃井かおりさんも喜ぶと思うんだけどな。「アタシが菊を育てたのヨ」と