優一は上川と別れると、タクシーに乗り込み自宅へと向かった。

タクシーに乗ると、早速封筒に入れられた上川からの刈谷氏殺害事件のファイルをめくった。

刈谷氏が殺害された現場はダイニングルーム。凶器は台所にあったと思われる包丁。それを左胸に一突きされている。血痕はダイニングルームにのみ見つかったことから、殺害は玄関ではなくダイニングルームで刺されたとみられた。

一番優一がひっかかったのは、ダイニングルームまでなぜやすやすと犯人を家の中に通してしまったのかということ。玄関先で襲われ、最後にダイニングルームでとどめを刺されたというのならともかく、なぜ・・・。しかも、包丁をキッチンから取り出した瞬間に抵抗する暇もなく、胸を一突き・・・あまりにも不自然だった。



やがてタクシーが自宅前に止まると、優一は書類を小脇にかかえ、自宅の玄関へと向かった。


「ただいま。」

そう言って優一が中に入ろうとすると、玄関先で由美子と鉢合わせになった。

「あ、先生。お帰りなさい。遅かったんですね。」

そう言った由美子の肩にはショルダーバックがかけられている。どうやらちょうど帰ろうとしたところのようだ。

「由美子君も今まで?」

「はい、大先生は先ほどお部屋に戻られていますよ。今日も上川警部とですか?」

由美子が小首をかしげながら聞いた。優一がうなづく。

「ああ。またあした捜査に同行してくれって言われてね。」

「そうですか。じゃあ、今日も上川さんからもらった資料か何かを読まれるんですね。」

由美子が優一が小脇にかかえている封筒を見ながら言った。

「ああ。今日は徹夜かもしれないな。」

「それじゃ、コーヒーでも入れますよ。」

そう言って由美子がまた奥のダイニングに戻ろうとする。

「由美子くん。今日はもう遅いからいいよ。」

「いえ、コーヒーを入れるだけですからぁ。」

由美子は少しでも優一と一緒にいたいらしい。優一の言葉を聞き流しながら、奥のダイニングに向かった。


~つづく~