その日の夜、優一は由美子を誘い、外の居酒屋の個室で食事をしていた。目的はもちろん、優一が今度の事件に関して由美子の意見を聞くためだったが、由美子はちょっとしたデート気分だった。なにより、優一のほうから由美子に声をかけてくれたのが、由美子にとってはちょっとうれしい出来事だった。

優一は、佐竹との話をし終わると、ひとくち酒に口をつけてのどを湿らすと、由美子に尋ねた。

「どう思うかい?」

由美子はつまみに頼んだ、野菜炒めを口に運びながらいった。

「なんか不自然ですよね。先生が言うとおり、最初から話が出来上がってるみたいで・・・。」

「そうだろ?」

優一はまた酒を口にしながら続けた。

「おそらくアリバイのほうは上川警部が調べてくれるだろうけど、完璧だろうね。穴らしい穴は見当たらないと思うよ。」

「でも・・・もうひとつ不思議な点があるように思いますよ。だって、もし青柳って人と、佐竹って人が共犯でそれぞれの殺人をしたとして、なぜ青柳って人が佐竹さんに殺されなければならなかったんでしょうね。」

「それは・・・これは想像だけど、青柳は父親の残した遺産を使い果たしてしまって、金をせびるために佐竹をゆすった可能性はあるよ。」

「あ、それなら動機になりますね。でも、二人をつなぐものが今のところ何もないのも不思議ですよ。ネットの線はどうなんです?」

そう優一に尋ねた優子は、手元のベルを押すと店員にレモンハイの注文をする。優一も、追加の料理を注文すると答えた。

「その話はしたけどね。おそらく仙台のほうでネットの履歴なんかを調べてくれると思うよ。それで、由美子君が言うように、裏サイトなんかにアクセスした履歴があれば、二人はつながる。あと、二人が事前に連絡を取り合っていないか、青柳の携帯の履歴も調べてもらうように警部に言っておいたから、二人がつながるのは時間の問題だと思う。そうすれば、事件はすぐに解決にむかうだろうけどね。」

「もし、そうなら今回は先生の出番はあまりないかもしれませんね。」

そういって由美子は笑ってみせる。優一は苦笑しながら答える。

「なにか、つまらなそうな感じだね。もっと難しい事件のほうが好みかな?」

茶化すような優一の言葉に、由美子は少しふくれっつらをしながらいった。

「事件が早く解決するのはいいことじゃないですか。私別につまらなそうな顔してませんよ。」

「そうだな。悪かった。」

優一はそういいながら、猪口に残った酒をぐっと開けた。

このときまでは優一は先ほど由美子が言ったとおり、それほど難しい事件にはならないだろうと考えていた。あとは、佐竹のアリバイを崩すことだけがキーだと思い込んでいた。しかし、実際の事件はさらに複雑に絡み合っていくことになろうとは、優一はまだ想像もできなかった。


~つづく~