優一はそのあと、井村の運転する覆面パトカーで木戸医院の前まで送ってもらうと、裏口から自宅へ入った。中から明るい声が響く。

「あ、おかえりなさい。」

出てきたのは、白衣姿の由美子だった。

「ただいま。」

「食事、まだです?先生の分も作ってありますから。」

由美子は奥の居間の方を見ながら言った。

「すまないね、由美子君。」

「いいえ。それよりどうでした、調査の方?」

由美子は今日の佐竹との話が聞きたくて仕方ないらしい。由美子はその話を聞いて、自分でも何か役に立てることを見つけたいのだ。

「ああ・・あとで話すよ。それより、今日は患者さんは多いのかい?」

「いいえ、午前中はそれほどでもなかったですよ。」

「そうか・・・親父も大変だろうから、午後はおれが診よう。」

そう言いながら、優一は壁にかけてあった白衣を手にした。

「わかりました。じゃあ、大先生にも、伝えておきますね。」

由美子はそう言ってうれしそうに診察室の方へ小走りで行った。午後は優一と一緒に仕事できることがうれしいらしい。普段は、大学の法医学研究室へいることが多い優一との数少ないコミュニケーションの場だからに違いない。

優一はふっと笑みを浮かべると、居間へとはいって行った。テーブルには、昼用に作ったサンドイッチが置いてある。おそらく、忙しい間を見て軽く食べられるようにと由美子が配慮したものだろう。優一はそれをひとつつまみあげると、一口ほおばって椅子に腰をかけた。そして、大きく伸びをすると、今日の佐竹の様子を思い浮かべていた。


~つづく~