「まあまあ、落ち着いてください。」

井村が懸命に佐竹を落ち着かせようとする。佐竹は優一をにらみつけたまま、ゆっくりと腰を下ろした。優一は視線を一切そらそうとはせず、佐竹の心のうちを読むように、じっと佐竹に目をやっていた。優一はあえて佐竹の気に障るような言い方をして、その反応から佐竹の態度を観察するつもりのようだ。

「話を変えましょう。」

そういって、上川が上着のうちポケットから一枚の写真を取り出した。あの青柳の写真だった。

「この人に見覚えはありますか?」

そう聞かれて、佐竹はちらりと写真に目を落とし、すぐに答えた。

「いいえ。初めて見る顔ですね。だれですか?」

「実は、この人が殺されたんです。3日前の話ですが・・・。」

井村がそういうと、佐竹が不思議そうな顔をする。

「それは気の毒な話だが、そのひとと私と何か関係があるんですか?」

佐竹の質問に今度は上川が答える。

「ええ。実はこの人は、あなたが盗まれた車で引かれた被害者の息子さんなんです。」

そういわれて、ようやく納得するように佐竹が言った。

「ああ、それで・・・。しかし、私はこの人とはまったく面識はないですよ。調べていただければわかると思いますが・・・。」

「そうですか・・・では念のためにお聞きしたいのですが・・・。」

そこまで上川が言いかけたところで、それをさえぎるように佐竹がいった。

「私のアリバイを聞きたいんですね?」

「ええ、そのとおりです。3日前の夜11時から11時半までの間、あなたはどちらにいらっしゃいましたか?」

「3日前ねぇ・・・。」

佐竹が部屋にかけられたカレンダーに目を移した。カレンダーにはその日の予定が記されている。

「ああ、その日は友人とつりに行ってました。夜の釣りを楽しみに、東京湾へ。」

「よろしければ、そのご友人の名前など教えていただけますか?」

井村が言うと、佐竹はテーブル脇のサイドボードの上からメモ帳を取り上げ、そこに相手の氏名と連絡先を書き出した。書き終わると、乱暴にメモを破き、それを上川に渡した。

「あと、聞きたいことはありますか?もしないなら、今日はこれくらいにしてもらえませんかねぇ。私も忙しいので・・・。」

「いや、ありがとうございました。また、なにかありましたらご協力お願いします。」

上川が丁寧に頭を下げ、ソファーから立ち上がった。


~つづく~