優一はメモを読みながら、今回の事件での疑問点を整理していた。

まず、なぜ青柳は殺されなければならなかったのか。
確かに遺産を受け継いだ青柳は、普段でも大金を持ち合わせていた可能性が高い。だとすれば、それをねらって突発的な犯行に及んだことも考えられる。しかし、警察の調べでは彼の財布の中には大金が残されたままだったと報告されている。だとしたら、物取りの犯行ということは考えにくい。

次になぜ青柳の父親は夜中に農道まで出歩いていたのだろうか。
夜中の12時近くに、一人でそんなところを歩いていたならそれなりの理由があったに違いない。その理由とは何か。

第三に、ひき逃げの犯人がどうして車を途中で捨てたのか。確かに重要な証拠品である車を捨てようと思う気持ちが働くことは理解できるが、なぜがけ下まで落とす必要があったのか。もともと盗難車である車を捨てるなら、どこかで乗り捨てるだけで十分ではないか。

第四の疑問。ひき逃げ犯はどうやって車を捨てた現場から立ち去ったのか。これには二つの可能性がある。ひとつは車を捨てた現場近くに、もう一台車を用意していたケース。もうひとつは、犯人が別の車で逃走したケース。前者の場合なら、最初からそこに車を捨てる算段で別の車を用意していたということになる。ならば、ひき逃げ犯の目的は青柳の父をひき殺すことにあったに違いない。後者のケースの場合、犯人と一緒に別の車で一緒に行動していた人間がいて、証拠を隠すために谷底に車を落としたあとで、もう一台の車に乗り込んだという推測が自然だ。この場合は必ずしも青柳の父親を殺すことが目的ではなく、偶発的な事故である可能性もある。

第五の疑問は、もし、青柳が誰かに殺害を依頼したとして、どのように殺害の手引きをしたのかということ。これは由美子の推理もひとつの可能性として上げられるが、ほかにもコンタクトを取る方法がなかったのだろうか。

これらの疑問を優一は繰り返し頭の中で整理していた。そして、青柳の父をひき殺した車のもともとの持ち主である佐竹が、この事件に何らかのかかわりがないかということも、優一は気になっていた。

もし佐竹がそれにかかわっていたなら、車を盗まれたというのはうそで、彼自身が青柳の父親を殺害した可能性が高い。だとしたら、その日の佐竹のアリバイはないということになる。しかし、当時の仙台署での調べでは、佐竹はその日は名古屋に出張で出かけており、完璧なアリバイがある。そもそも、佐竹と青柳との接点も見つかっていないのだ。由美子の言うように、佐竹がインターネットで依頼を受けたとしても、犯行そのものを行うこと自体が不可能なのだ。

優一は明日佐竹への聞き込みに同行する際に、どうやって佐竹からこれらの疑問点を探り出せるか、考え続けた。

~つづく~