翌年。


2月14日。都内の式場でまひると広瀬の結婚披露宴が執り行われた。会社の同僚や友人を招いての披露宴。その会場が一瞬暗くなると、前方の入口にスポットライトが当たった。

ゆっくりと開かれる扉。そこには白いウエディングドレスを身にまとったまひると、同じようにタキシードで決めた広瀬が立っていた。二人は一礼すると、ゆっくりと雛段へと歩を進める。仲人の席には、カルバドスのマスターの清水夫妻が待っている。

全員から盛大な拍手が沸く。同時にフラッシュがたかれる。

招かれた招待客には当然優子も、江島もいた。江島も二人の晴れ姿に拍手を送っている。

「きれいよね、まひる。」

優子が当てつけるように江島に言った。

「ま、俺が見込んだだけのことはあるな・・。」

「うらやましいんでしょ?」

優子が冷やかすと、江島が切り返す。

「お前も早いとこ相手見つけないと、行きおくれるぞ。まあ、お前を相手にするやつがいればだけどな。」

「江島君だって、そのうち相手いなくなっちゃうよ。」

「ま・・その時はしょうがないからお前で我慢するか・・・。」

「あらぁ・・・私は保険?ずいぶん低くみられたなぁ・・。」

そう言いながら、優子はまんざらでもなさそうだ。



末席では、愛娘のまぶしい姿に拍手を送る矢島がいた。

矢島は満足そうな笑顔で二人を見つめていた。そして、広瀬の家族が座る席の一番後ろには、誰も座っていない席に、料理が置かれていた。もちろんそこは『まひる』のための席だ。広瀬がすべての話を聞いて、是非にと用意した席だった。二人の幸せそうな姿を、まひるもきっと天国から見守ってくれている・・・そう信じて作った席だった。

矢島はその席に眼を移す。

矢島の目に一瞬その席で拍手をしているまひるの姿が浮かんでは消えた。矢島は心の奥でつぶやいた。

『まひる・・・今日から君と僕は本当の家族だね。』

矢島の目に涙がにじんだ。


~つづく~