二人はゆっくりとダイニングの方へ歩を進めた。閉じられたドアを開けた時、京子の明るい声が響いた。

「いらっしゃい。待ってたわよ。」

京子は笑顔で二人を出迎える。まひるはあたりを見回したが、矢島の姿が見えない。まひるは怪訝そうな顔をしながら京子に尋ねる。

「お父さんは?」

「ああ、お父さんは今ちょっと出かけてるの。すぐに戻ると思うけど。」

「まったく・・・こっちは時間どおりに来てくれてるのに・・・。」

まひるが不服そうに膨れた。

「まひる・・・とにかくお父さんが帰ってくるの待とうよ。」

広瀬がまひるをとりなすように言った。

「そうそう。さ、座って。」

京子が広瀬に席を勧めた。二人が腰をおろすと、ダイニングテーブルにはたくさんのごちそうが並んでいるのに二人は気がついた。4人で食べるにはちょっと多すぎる量だ。まひるが京子に尋ねる。

「ねえ・・・いくらなんでも、これ・・・多くない?」

まひるは目を丸くしている。しかし京子は「それでいいのよ。」といって、やさしく笑ってみせた。その笑顔がまひるには少し不自然に映った。


10分ほどした時のことだ、入口のほうから声がする。

「ただいま。」

父、矢島の声だった。
思わず広瀬が緊張して体を硬くする。そして、足音が近づくと、静かにドアが開けられ、矢島が顔を出した。

「やあ、いらっしゃい。待たせてしまって申し訳ない。」

矢島は明るい声と笑顔で広瀬を迎えた。

「あの・・・はじめまして!広瀬守です!」

広瀬は、がちがちになって最敬礼で頭を下げた。その姿を見て、矢島がやさしく笑みを作りながら言った。

「まあ、座ってくれないか。ゆっくり話をしよう。」

そう言いながら、矢島は広瀬の正面の席に腰をおろした。


~つづく~