結局まひるは父からの事前の了解を得られず、浮かない顔で自室へと戻っていった。その後ろ姿を見送っていた京子が矢島に声をかけた。

「素直じゃないですね。あれだけまひるの結婚を待ち望んでいたのに・・。」

そう言いながら、京子は矢島のはす向かいに腰をかけると、ビールを注ぐ。矢島は複雑そうな表情を作りながら答える。

「まだ、彼とも会っていないしね。もちろんいい青年だと思うけど、あまりあっさり了解したら、喜びもすくないだろ?」

「意地悪ですね。まひるは不安がってますよ。」

京子が矢島をたしなめるように言った。

「俺だって・・・・待ったんだ。もう少し待たせてもいいだろ?」

「それは分かってますけど・・・。」

京子も少しさびしそうにうつむく。そんな京子をよそに、矢島は携帯電話に手を伸ばすと、なにやらメールを打ち始めた。

「早瀬さんですか?」

「ああ・・・あいつとマスターには連絡しておかないとな。」

矢島は手早くメールを打ち終わると、送信ボタンを押した。

「で、彼が来たときはどうするつもりです?」

「その時はすべて話すさ。」

矢島はまたビールを口にしながら大きな伸びをした。すると、矢島の携帯が鳴った。どうやら早瀬からの返信のメールのようだ。矢島は携帯を開けると、そのメールに目を通す。そして、その携帯の画面を京子に見せると、矢島は言った。

「早瀬からの返信のメールだ。京子・・・準備頼むよ。」

京子はそのメールに眼を通すと、笑みを浮かべながら答えた。

「はい。準備万端整えておきます。」

京子はそのメールの返信を見て、ようやくほっとしたような表情を浮かべた。


~つづく~