ふれあい広場でひとしきり楽しんだ二人は、それからゆっくりと園内を歩いて回った。やはりここでもまひるの思ったとおり、広瀬の知識は図鑑並だった。動物の名前の由来から、生態まで、実にたくさんのことを知っている。まひるは改めて広瀬の知識の広さに舌を巻いていた。

「ねえ、広瀬君。動物がすきなのはわかるけれど、どうしてそんなに詳しいのかな?ほんとにびっくりしてるんだけど・・・。」

そう聞かれて、広瀬はすこしうつむき加減に答えた。

「いえ・・・僕は昔からいじめられっこだったでしょ?だから、休みの日には誰と遊ぶこともしないし、できなかったから、家で本を読むくらいしか時間を作ることができなかったんです。本を読むのも好きだったし、学校に行くことよりもそのほうが楽しかったですけど・・・。おかげで、学校の図書室の本はほとんど読みきってしまいましたけど。」

それを聞いて、まひるは思わず父を思い出していた。父も母も、本を読むのは大好きだ。二人とも大学のときは文芸部だったといっていた。ひょっとしたら、自分の両親も同じような思いで、一日を過ごしていたのかもしれない。そう思うと、広瀬の今の言葉が、まひるの心に大きくのしかかってきた。

「まひるさん・・・どうかしましたか?」

広瀬が心配してまひるの顔を覗き込む。まひるははっとして、頭を左右に振りながら答えた。

「ううん。なんでもないよ。ねえ、それよりそろそろお昼にしない?私、早起きしてお弁当作ってきたんだよ。一緒に食べよう!」

まひるは自分に「しっかりしろ!」と言い聞かせた。今の広瀬には、少しでも楽しい時間が必要なのだ。それなのに自分が落ち込んでしまったら何もならない。それに、今自分の中では、広瀬への今までと違った思いが芽生えていることを、まひるは感じ取っていた。広瀬に自分が必要である以上に、自分は広瀬が必要だ・・・そう思っていた。

「楽しみですね。まひるさんのお弁当。」

「あはは、あんまり期待しないでね。母に教わりながらだから、うまくいってるとは思うけど。」

まひるは、そういうと自分のほうから広瀬の手を取り、近くのあいたベンチへと小走りで向かった。


~つづく~