「それじゃぁ、いってきま~す!」

まひるが京子から借りたワンピースに着替えて、かけだすように家を出たのはそれから30分もたったころだった。

「いってらっしゃい!」

京子がそれを見送る。矢島は、相変わらずダイニングで新聞を広げている。

「行ったみたいだな・・。」

ダイニングに戻ってきた京子に、矢島がつぶやくように言った。

「そうですね。昨日のうちから用意しておけばいいのに・・。」

「あれ、デートだな・・。」

「え?」

京子が一瞬固まる。いつもはこういうことには鈍感な矢島が、ぴたりと言い当てたことに京子は驚いたようだ。

「相手、どんな奴だ?」

矢島が、新聞に眼を通しながら言った。京子は言葉を選ぶように言った。

「えっと・・・。高校の時の同級生だっていってました。」

そう言いながら京子は矢島の表情を窺い見る。矢島の表情はまったく変わる様子がない。

「そうか・・・。あいつも、やっと彼氏ができたか・・。この間一緒に飲んだ時、彼氏がいたことがないと言っていたから、心配してたが・・・取り越し苦労だったみたいだな。」

矢島は穏やかな表情で京子の方に眼をやった。京子が思わず視線を落としたので、矢島が笑みを浮かべながら言った。

「あの子も大人だ。ま、結婚でもする気になったら、あいつから言ってくるだろう。」

そう言って、矢島は再び新聞に眼をやった。

~つづく~