次の日曜日。まひるは、いつもよりおめかしに時間をかけていた。まひるの心の中には明らかに広瀬に対するあたらしい気持ちが芽生えていたからに他ならなかった。

「おかあさん、これでおかしくないかなぁ」

まひるが何度目かの着替えをして、京子のところにやってきた。京子がそれを見ながら、答える。

「うん。おかしくないわよ。」

「そうかなぁ・・。なんとなくしっくりこないんだよねぇ。」

まひるは自分の体を見ながら、どことなく不満そうだ。そんなやりとりをしているときに、矢島がおきてきてまひるに声をかけた。

「おや?きょうはどこかに出かけるのか?」

矢島の声に思わずまひるが驚く。今日は広瀬とのデートなどとは答えられるはずもない。なんと答えようか・・。そう考えているときに、京子が助け舟を出す。

「お友達とお出かけみたいよ。」

「ああ、それでおめかしか・・・。」

矢島は新聞を広げながら、ゆっくりとダイニングのいすに腰をかけた。そして、新聞に目を通しながら言った。

「京子のあの服、かしてやったらどうだ?きっとちょうどいいと思うけどな。」

「あの服?」

まひるが首をかしげる。一方京子は、それでぴんときたようだ。矢島の言葉に無言でうなづくと、二回へと駆け上がっていく。

「ねえ、あの服って何?」

まひるが、ちょっと不安そうに矢島に尋ねる。矢島は、新聞に目を通しながら答えた。

「かあさんが、父さんとはじめてデートしたときの服だ。かあさん、見違えるようにきれいでな。お前にもきっと似合う。」

その言葉が終わるか終わらないかのうちに、京子がその服を持って二階から降りてきた。その手には、ブルーを基調としたワンピースに、白のカーディガン。ちょっとふちの広い帽子を持っている。まひるは、その服をまじまじとみつめながら言った。

「へえ・・・これが最初のデートの服かぁ。うん、いいかも。」

まひるは母が大切にしまっていた服を手に取り、まんざらでもなさそうだった。

「おかあさん、これ借りるね。」

そういってまひるは母の手からその服をとると、それを抱えるように二階へと駆け上がっていった。

~つづく~