田島は再びホームベースのすぐ後ろにしゃがんだ。

ひとみの後ろでは、青島がじりじりとリードを広げている。田島は、武藤が何を狙っているのか、さっきの会話で十分理解していた。田島はまようことなくストレートのサインを出す。ひとみがゆっくりとうなづいた。

ひとみはセットポジションから、クイックモーションでストレートをインコースに投げる。

「よし!」

それと同時に、青島は一気にスタートを切った。それほどいいスタートではない。バッターは援護の空振りで青島のスチールを助けに行くが、田島は迷いなくそのボールをキャッチすると、サードの武藤に目をやる。

武藤は、ベースのぎりぎり近くでグラブを構えている。そこへ向けて田島が矢のような送球を送った。

武藤はグラブをまったく動かすことなく、そのボールを受け取る。そしてランナーの青島に目をやった。予想通り、肩からタックルを食らわせようとヘッドスライディングに入るところだ。このままぶつかれば加速がついている分、武藤に危険が及ぶ。しかし、武藤の口元には笑みが浮かんだ。

武藤は距離を測りながら、ボールの入ったグラブを青島の顔面にたたきつけた。

「ぐあ!」

青島の苦痛の声が響いた。そして返す刀のように、そのグラブを今度は頭にたたきつける。怪力の武藤に頭からグラブをたたきつけられた青島は、そのまま体ごと地面に打ち付けられた。

「ぐほっ!」

また、苦しげな声を上げる青島。しかし、武藤はまゆひとつ動かさない。そして冷たい口調で言った。

「わりいな。ちょっと勢いがあまっちまった・・。」

青島がその言葉に、ゆっくりと武藤を仰ぎ見た。その目には明らかに怒りの表情が見て取れた。

「アウト!」

審判が手を上げると、武藤はくるりと青島に背を向けてベンチへ向かって歩き出した。

「許さないよ・・・武藤・・・!」

青島は口元ににじんだ血を手でぬぐうとつぶやいた。

~つづく~