もうもうと立ち込める砂埃。その向こうでなにが起きているのか、スタンドの新田も武田も晴美も、じっとその砂埃の向こうにある田島とキャッチャーの姿を探していた。

やがて砂埃が風邪によって消し去られると、主審の手が挙がった。

「アウトォ!」

なんということか。田島の足はあと数センチでホームというところで止まっていた。もし、サードランナーが速水であれば完全にセーフだったろう。その判定を聞いた西応応援団はがっくりと肩をおとした。逆に山原工業の応援団は大歓声を上げた。


「これが野球だ・・・。」

新田もがっくりとしながら腰を下ろす。それを見ながら、武田と晴美も腰を下ろした。

「新田さんのせいじゃないですよ。運がなかっただけです。きっと、勝ちますよ!」

晴美は必死で新田を励ました。しかし、自分の分析ミスから大石を失った西応に対する悔やんでも悔やみきれない思いは払拭できなかった。

「新田。それがお前のいいところだが、弱点だ。」

となりの武田が新田の肩をたたいた。

「お前は思い入れが激しい。こだわりといったほうがいいかもしれない。たとえゲームで敵同士でも、グランドを離れれば、相手のことを必要以上に気遣う。」

新田がその言葉に顔を上げた。

「みんなわかってるさ。西応ベンチを見てみろ。今のチャンスをつぶしても、まったく士気が落ちていない。なぜかわかるか?」

確かに、西応ベンチ周りには、円陣が組まれさらに士気を高めようと大きな声で気合をかけている。

「みんなお前がどれだけ自分たちのためにグランドの外で戦ってくれているかわかっているのさ。だからみんなは、ひとつになって勝とうとしている。お前のためにな。」

「武田・・。」

それまで落ち込んでいた新田の目に、再び光が戻ってきていた。

「大丈夫。お前がやったことにミスはない。ただ、運がなかっただけだ。その姉ちゃんの言うとおりさ。」

新田が視線を晴美に移す。晴美も笑顔を作りながらうなづく。新田はそれを見て、また少し安心したように言った。

「そうだな・・・俺もあいつらを信じなくちゃならないな・・。」

新田は再びマウンドに上がったひとみを見つめながらつぶやいた。


~つづく~