ひとみは4回の表のピッチングに入った。とりあえずここまでパーフェクトに抑えてきていた。しかし、打順は1番我那覇から。油断はできなかった。

ひとみはまずは自信のストレートでインコースを責める。我那覇はそれを待っていたように、セーフティーバントを試みる。サードの武藤がダッシュして、すでで処理した打球を浅野に投げる。間一髪アウトにする。

つづく2番の首里。ひとみはストレートにスライダーを織り交ぜながら、首里を追い込むと、最後はチェンジアップを打たせて、ショート原へのゴロに打ち取った。そして3番喜屋武を迎えた。

ここで切らなくてはいけない・・・ひとみの心の中に見えないプレッシャーがかかる。喜屋武を出せば青島につながる。

ひとみは初球からスライダーで攻める。喜屋武はそれをひっかけ、一二塁間にゴロを転がした。誰もが打ち取ったと思った瞬間、ボールを受けた大石が、そう球の瞬間バランスを崩してボールが高く浮いた。必死に浅野が手を伸ばすが、一瞬早く喜屋武がベースを駆け抜ける。

「セーフ!」

スコアーボードの掲示はエラー。まだノーヒットだ。しかし迎えるバッターは青島。ひとみのほほを冷や汗がつたう。

ここで、田島がタイムをかけてひとみに駆け寄った。

「大丈夫か、涼風?」

「うん。私は大丈夫だよ・・でも、大石さん、かなり足が痛いんじゃないかな・・。さっきのだって、普段の大石さんだったらあり得ないもの。」

ひとみは心配そうに大石に眼をやる。

「涼風、今は青島に集中だ。新田さんのアドバイス覚えてるよな?」

ひとみは黙ってうなづいた。

「それならいい。徹底してアウトコースのスライダーだ。いいな?」

「わかった・・。」

ひとみは元気なく言った。よほど大石のことが心配なのだろう。


一方の青島はすでに獲物を狙うような眼で、ひとみを睨みつけていた。今度は誰を餌食にしようか狙いを定めているようだ。

『いくぞ、涼風!』

ひとみはうなづくと、予定通りアウトコース低めへとスライダーを投げる。きわどいボールだが、それに青島は見事に反応し、一二塁間へ打球が飛んだ。飛んだ場所には怪我の大石がいる。青島は、そこをあえて狙ったのだ。

「抜かせるかよ!」

大石がワンバウンドでボールを横っ飛びでつかむと、起き上がりざま倒れこむように、一塁の浅野に送球を送る。きわどいタイミング。当然のように青島は体をぶつけに来る。ボールを取ると同時に、浅野は身をひるがえして、直撃を避けるが、青島の肘が浅野の脇腹に入った。

「ぐ!」

浅野はその場にうずくまったが、それでもボールは離さずしっかりと抱きかかえるようにしている。そして一塁塁審を見上げた。

「アウト!」

浅野の表情が緩んだ。これでまたひとつ山を超えた。そう思った瞬間、浅野の目にはグランドに倒れたままの大石の姿が目に飛び込んでいた。

「大石!」

浅野が叫んだと同時に、全員が大石の周りに駆け寄ってきた。


~つづく~