不破をはじめ、数人の選手が飛び出し、大石の様子を見に行く。

大石は頭を押さえながらゆっくりと立ち上がろうとするが、体のバランスが取れないのか、膝をついたままそれ以上は動けない。確かに150キロの送球を頭に受けたのだ。普通でいられるはずがない。

「大丈夫か大石!」

浅野が大声で言った。大石は頭を二回三回と振った後答えた。

「でけえ声出すなよ。頭にひびく・・。」

大石は必死に立ち上がろうとする。しかし、なかなか立ち上がれない。近くにいた不破と大高が大石に肩を貸す。

「大丈夫だ。少し休めば・・・。」

「ばか!何かあったらどうする!」

塁に戻ろうとする大石を浅野が必死で止める。

と、ベンチから大声で小野田が言った。

「速水!特別代走(臨時代走)だ!」

「特別代走か・・・その手があったか・・。」

特別代走とは、怪我をした選手が治療に時間を要する場合などに、別の選手が一時的に代走にでることを特別代走または臨時代走と言う。この場合、大石の治療にかかる時間を取るための一時的措置だ。

審判の了解を得て、速水が三塁へ向かう。これで、ワンナウト3塁で打者は浅野という、絶好のチャンスが出来上がった。

しかし、青島はあわてる様子もなく、マウンドに仁王立ちしている。

『ちょうどいい。これで速水を潰せる・・。』

青島は口元に笑みを浮かべながら思った。


青島が次の投球動作に入る。しかし、青島のボールは大きくそれ、ワイルドピッチとなった。

「よっしゃ、ラッキー!」

速水が一気にホームを狙った。しかし、ボールはバックネット下にあたり、大きく跳ねて後ろに走ったキャッチャーがうまくそれを処理する。そして振り向きざまに、ホームベースカバーに入った青島に送球する。青島はベースを隠すようにブロックの体制を作ると、そのまま上からのしかかるようにタッチに行った。

ドカ!

鈍い音がした。そして、次の瞬間速水の断末魔の様な叫び声が球場に響いた。

「アウトォ!」

審判がアウトを宣告した。大きな足で青島が速水をブロックし、膝のあたりに青島の肘が入ったようだ。しかし、わずかにベースには届いていない。速水は膝を押さえながら、うずくまった。

「速水ぃ!」

浅野が叫ぶ。

その瞬間、ひとみは両手で顔を覆い、ベンチの陰にうずくまっていた。


~つづく~