青島は次の打者大石を迎えて、今度は一転アウトコースから入る。ボール球を見させると、次はインコースのきわどいボールでストライクを取る。そして、さらにアウトコースの変化球を打たせ、ファーストへのゴロとなった。
ベースカバーに青島が入る。きわどいタイミングだった。その瞬間、ひとみが叫んだ。
「危ない!」
二人はほぼ同時に一塁ベースを駆け抜けたが、次の瞬間大石がもんどりうって倒れた。球場の選手や観客も一瞬何が起きたのかわからない。すこし間をおいてから、一塁塁審が両手を広げた。
「セ・・・セーフ!」
どうやら、大石の足が一瞬早かったようだ。しかし、当の本人はつま先のあたりを押さえて、ファールグランドでうずくまっている。あわてて不破が救急箱を持って走ってくる。次の打者の浅野も大石を覗き込む。
「大丈夫か、大石・・。」
「くそ・・・あの野郎、足を踏みやがった。」
大石が苦痛に耐えながら、スパイクを外す。ソックスが血で赤く染まっている。
「不破。とりあえず止血とテーピングを頼む。」
「え?大石さん、この怪我で出続けるんですか?」
不破が信じられないという表情をする。しかし大石は譲るつもりはない。今日の試合だけは怪我で途中退場はできなかったからだ。そう、それは新田から浅野に伝えられたメッセージだ。
『涼風に青島用に会得したボールを投げさせるな。それを投げるときは涼風がトラウマを乗り越えた時か、あるいは涼風が野球を辞める時だ。それを防ぐためには、お前たちがどんな状態でも最後までグランドに立っていることが必要だ。お前たちの誰か一人でも書けるようなことがあれば、涼風は躊躇なくそのボールを投げるだろう。』
浅野の脳裏に新田の言葉がよみがえる。浅野は心を鬼にして大石に言った。
「大石。無理して走らなくてもいい。とにかくグランドに立っていろ!」
「お前に言われなくても分かってるよ、浅野・・・。」
大石は応急処置をすると、ゆっくりと立ち上がった。まだ踏まれた左足が痛いに違いないが、それを必死に表情に出すまいと懸命に痛みをこらえているようだ。
一方の青島は素知らぬ顔で、キャッチボールで肩を慣らしていた。
『フン!無理して出てきたか・・・でも、その足じゃ走れないよ。』
青島は次の打者浅野を迎えても、セットポジションは取らず、おおきく振りかぶった。今のけがでは大石は走ってこないと思ったからだ。
一球目、やはりインコースの厳しいところにシュートが来る。浅野はそれを体をよじりながらよける。
『次はアウトコースへスライダーだな・・・』
浅野は覚悟をきめてバットを握りなおす。二球目、やはりセットポジションをしないで振りかぶった姿を見て大石が叫んだ。
「なめるな!」
大石は痛む足をかばうこともせずに、セカンドへ盗塁する。浅野は大きく踏み込んでボールにバットをぶつけに行くが、空振りになる。キャッチャーがすかさずセカンドへ送球するが間に合わない。これでワンナウト2塁。得点のチャンスだ。
「ほう・・やるねぇ。でも、これ以上好きにはさせないよ。」
青島は今度はセットポジションで投球動作に入る。今度はまたインコースへ。浅野も負けじとバットを振るが150キロを超える速球に押され、バックネットへファールになる。
そして、3球目。また「アクシデント」が起きた。青島はセットポジションからセカンドへ牽制球を送る。大石があわてて二塁に戻ろうとするが、そのヘルメットに青島の送球が直撃した。ボールは大きく跳ねて左中間方向へ転がる。大石はそれを見て立ち上がると、二塁から三塁へ向かった。しかし、ベース手前で激しいめまいに襲われた大石は、倒れこむように三塁に達した。大石は倒れた後、ぴくりとも動かない。
「大石さぁーん!!」
ひとみが悲鳴を上げた。
~つづく~
ベースカバーに青島が入る。きわどいタイミングだった。その瞬間、ひとみが叫んだ。
「危ない!」
二人はほぼ同時に一塁ベースを駆け抜けたが、次の瞬間大石がもんどりうって倒れた。球場の選手や観客も一瞬何が起きたのかわからない。すこし間をおいてから、一塁塁審が両手を広げた。
「セ・・・セーフ!」
どうやら、大石の足が一瞬早かったようだ。しかし、当の本人はつま先のあたりを押さえて、ファールグランドでうずくまっている。あわてて不破が救急箱を持って走ってくる。次の打者の浅野も大石を覗き込む。
「大丈夫か、大石・・。」
「くそ・・・あの野郎、足を踏みやがった。」
大石が苦痛に耐えながら、スパイクを外す。ソックスが血で赤く染まっている。
「不破。とりあえず止血とテーピングを頼む。」
「え?大石さん、この怪我で出続けるんですか?」
不破が信じられないという表情をする。しかし大石は譲るつもりはない。今日の試合だけは怪我で途中退場はできなかったからだ。そう、それは新田から浅野に伝えられたメッセージだ。
『涼風に青島用に会得したボールを投げさせるな。それを投げるときは涼風がトラウマを乗り越えた時か、あるいは涼風が野球を辞める時だ。それを防ぐためには、お前たちがどんな状態でも最後までグランドに立っていることが必要だ。お前たちの誰か一人でも書けるようなことがあれば、涼風は躊躇なくそのボールを投げるだろう。』
浅野の脳裏に新田の言葉がよみがえる。浅野は心を鬼にして大石に言った。
「大石。無理して走らなくてもいい。とにかくグランドに立っていろ!」
「お前に言われなくても分かってるよ、浅野・・・。」
大石は応急処置をすると、ゆっくりと立ち上がった。まだ踏まれた左足が痛いに違いないが、それを必死に表情に出すまいと懸命に痛みをこらえているようだ。
一方の青島は素知らぬ顔で、キャッチボールで肩を慣らしていた。
『フン!無理して出てきたか・・・でも、その足じゃ走れないよ。』
青島は次の打者浅野を迎えても、セットポジションは取らず、おおきく振りかぶった。今のけがでは大石は走ってこないと思ったからだ。
一球目、やはりインコースの厳しいところにシュートが来る。浅野はそれを体をよじりながらよける。
『次はアウトコースへスライダーだな・・・』
浅野は覚悟をきめてバットを握りなおす。二球目、やはりセットポジションをしないで振りかぶった姿を見て大石が叫んだ。
「なめるな!」
大石は痛む足をかばうこともせずに、セカンドへ盗塁する。浅野は大きく踏み込んでボールにバットをぶつけに行くが、空振りになる。キャッチャーがすかさずセカンドへ送球するが間に合わない。これでワンナウト2塁。得点のチャンスだ。
「ほう・・やるねぇ。でも、これ以上好きにはさせないよ。」
青島は今度はセットポジションで投球動作に入る。今度はまたインコースへ。浅野も負けじとバットを振るが150キロを超える速球に押され、バックネットへファールになる。
そして、3球目。また「アクシデント」が起きた。青島はセットポジションからセカンドへ牽制球を送る。大石があわてて二塁に戻ろうとするが、そのヘルメットに青島の送球が直撃した。ボールは大きく跳ねて左中間方向へ転がる。大石はそれを見て立ち上がると、二塁から三塁へ向かった。しかし、ベース手前で激しいめまいに襲われた大石は、倒れこむように三塁に達した。大石は倒れた後、ぴくりとも動かない。
「大石さぁーん!!」
ひとみが悲鳴を上げた。
~つづく~