一回を終わって6-3。誰も予想しなかった打撃戦。

スタンドで見守る新田や晴美もあっけに取られていた。ひとみが初回に3点を取られたのも意外だったが、その裏西応が6点を返すとは、さすがの新田も予想外だったらしい。

「さて・・このあとどうなるか・・・全く分からないな。涼風も、初回の3点を引きずらなければいいが・・。」

「新田さん・・また、変なこと言わないでくださいよぉ!」

不安に駆られていた晴美が、新田の言葉に余計不安に駆られたようだ。


2回。ひとみはまたピンチを招く。

7番から始まる下位打線だが、ひとみはまたスライダーを狙われ、いきなりノーアウト1塁。8番が送って、ワンナウト2塁。続くラストバッターには、ライト前へポテンヒットを打たれ、1塁3塁。そして、1番坂田を迎えた。

「一回りして、またやなバッターを迎えちゃったな・・。」

ひとみは、自分のスライダーがことごとく打たれ、やや自信を失いかけていた。きっと坂田もまたスライダーを狙ってくる。ならば、スライダーは見せ球に使って、他のボールで打ち取ろう。ひとみと田島は攻め方を大幅に変えることに決めた。

初球。アウトコースに逃げるスライダー。坂田はそれを見極めワンボール。2球目はボール気味のストレートを打たされ1-1となった。ひとみと田島はここで、シュートを選択した。

インコースに投げられたシュート。それを坂田はひっかけてセカンドゴロに。大石が、ダブルプレーを狙ってショートへ送球。原が1塁ランナーを封殺するが、1塁は俊足の坂田がかけぬけ、また1点を献上してしまった。

これで6-4。打撃戦の様相はまったく変わらない。さらにひとみは、2番打者には粘られ、フォアボールを出してしまう。そして、3番鳥澤を迎えた。

ひとみは、初球シンカーで低めを責める。しかし、鳥澤は素晴らしいバットコントロールでライトへ流し打つ。セカンドランナーの坂田がまっしぐらにホームへ向かう。大高が必死でボールを返すが、ホームは間に合わない。5点目のホームを坂田が踏む。

しかし、1塁ランナーがサードまで向かおうとしたのを見て、田島が判断よくサードへ送球する。武藤がそれをしっかりとキャッチし、滑り込んでくるランナーにタッチした。

「アウト!」

審判が大きく手を挙げた。

ネクストバッターサークルの武田が悔しそうにバットを地面にたたきつけた。もし、サードに田島がいい送球を送らなければ、また1塁3塁で武田を迎え、逆転のチャンスだっただけに、武田も悔しかったのだろう。

一方西応にとってみれば、武田の前にランナーをためずに済んだことは大きかった。それでも、2点を取られ、1点差。気を抜くことができる状態ではなかった。ひとみも、始めてこれだけ打ちこまれ、投げるボールが思い当らなくなっていた。それほど上野原実業の打線が強力だということだ。

そして試合はさらに混とんとしてくることになるとは、このときはまだ誰も予測していなかった。


~つづく~