速水は打席に入ると、ふーっと大きく息をついた。もう一点取れば、ひとみは楽になる。速水も疲れてはいたが、この打席はそんな疲れを感じていなかった。
伊丹の初球。速水はピッチャー前へセーフティーバントをする。伊丹は必死にダッシュして、ボールをつかむと一塁へ送球する。速水は決死のダイビングヘッドスライディングで一塁へ飛び込んだ。
「セーフ!」
速水の足の勝ちだった。速水はベース上で右手を突き上げる。
そしてバッターは大石。その初球、速水は二塁へスタートする。外角のボール球。大石は、援護の空振りをする。キャッチャーは二塁に投げることすらできず、速水は二塁に滑り込んでいた。
そして、2球目。大石は変化球をとらえ、セカンドの右を抜いてライト前へゴロのヒット。速水はまっしぐらにホームへ向かう。ライトからいいボールが返ってきたが、速水はキャッチャーのタッチをかいくぐると、左手でホームベースに触れた。
「セーフ!」
ひとみのホームランからわずか3球で2点目をゲットした西応。ピッチャーの伊丹はマウンド上でがっくりと肩を落とした。ひとみのホームランがナインに火をつけたようだ。
そして、浅野・武藤もヒットを連ね、さらに1点を追加した西応、4-1で攻守交替となった。
延長13回裏。ひとみがゆっくりとマウンドに上がった。3点のリードは、今のひとみの体力ではセールティーリードではない。しかし小野田はあえてひとみをマウンドへ送った。小野田にしてみれば、ここまで引っ張ってきたひとみに代えて、浅野をマウンドに上げるよりは、ナインのモチベーションは高くなると判断したのだ。
ひとみは田島のリードを受けながら、丁寧にコーナーをついていく。最初の打者をセカンドライナーに、次の打者は左中間に大きな当たりを飛ばされるが、レフトの片岡がダイビングキャッチでツーアウトランナーなしまで持ってきた。
しかし、次はホームランを打っている綾瀬。この場面でも、小野田は動こうとはしなかった。完全にこの試合はひとみに下駄を預けたというところだろう。
綾瀬はファールで粘る。ひとみもコーナーを突きながらカウントを稼いでいたが、カウントは2-2で10球目となった。
『涼風・・・スライダーだ!』
『やっぱりそれしかないよね・・・わかった』
ひとみは最後の力を振り絞って、得意のスライダーをアウトコースに投げ込む。綾瀬も、渾身の力を振り絞って食らいつく。バットはボールにかすり、ファールチップとなって、田島を襲った。
ドカ!
ボールが、田島の腹部に当たる。しかし田島はそれを離すまいと、必死にミットをかぶせた。ボールの回転がミットの中で止まると、田島はミットを高々とあげた。
「ストライク、バッターアウト!ゲームセット!」
ひとみの顔に安堵の表情が浮かんだ。そして、ナインがまるで優勝でもしたかのようにホームへ駈け出した。ひとみは苦労しながら165球の粘りのピッチングで勝利をもぎ取った。
「西応高校、奇跡的な逆転勝利でベスト16進出を決めましたぁ~!」
実況のアナウンサーが、マイクにかぶりつくように大きな声で西応の勝利を伝えた。
観客席の新田と晴美も両手をあげて、喜びを分かち合っていた。これでベスト16。本当の戦いはこれからだが、新田は今はこの勝利に素直に喜んでいた。
~つづく~
伊丹の初球。速水はピッチャー前へセーフティーバントをする。伊丹は必死にダッシュして、ボールをつかむと一塁へ送球する。速水は決死のダイビングヘッドスライディングで一塁へ飛び込んだ。
「セーフ!」
速水の足の勝ちだった。速水はベース上で右手を突き上げる。
そしてバッターは大石。その初球、速水は二塁へスタートする。外角のボール球。大石は、援護の空振りをする。キャッチャーは二塁に投げることすらできず、速水は二塁に滑り込んでいた。
そして、2球目。大石は変化球をとらえ、セカンドの右を抜いてライト前へゴロのヒット。速水はまっしぐらにホームへ向かう。ライトからいいボールが返ってきたが、速水はキャッチャーのタッチをかいくぐると、左手でホームベースに触れた。
「セーフ!」
ひとみのホームランからわずか3球で2点目をゲットした西応。ピッチャーの伊丹はマウンド上でがっくりと肩を落とした。ひとみのホームランがナインに火をつけたようだ。
そして、浅野・武藤もヒットを連ね、さらに1点を追加した西応、4-1で攻守交替となった。
延長13回裏。ひとみがゆっくりとマウンドに上がった。3点のリードは、今のひとみの体力ではセールティーリードではない。しかし小野田はあえてひとみをマウンドへ送った。小野田にしてみれば、ここまで引っ張ってきたひとみに代えて、浅野をマウンドに上げるよりは、ナインのモチベーションは高くなると判断したのだ。
ひとみは田島のリードを受けながら、丁寧にコーナーをついていく。最初の打者をセカンドライナーに、次の打者は左中間に大きな当たりを飛ばされるが、レフトの片岡がダイビングキャッチでツーアウトランナーなしまで持ってきた。
しかし、次はホームランを打っている綾瀬。この場面でも、小野田は動こうとはしなかった。完全にこの試合はひとみに下駄を預けたというところだろう。
綾瀬はファールで粘る。ひとみもコーナーを突きながらカウントを稼いでいたが、カウントは2-2で10球目となった。
『涼風・・・スライダーだ!』
『やっぱりそれしかないよね・・・わかった』
ひとみは最後の力を振り絞って、得意のスライダーをアウトコースに投げ込む。綾瀬も、渾身の力を振り絞って食らいつく。バットはボールにかすり、ファールチップとなって、田島を襲った。
ドカ!
ボールが、田島の腹部に当たる。しかし田島はそれを離すまいと、必死にミットをかぶせた。ボールの回転がミットの中で止まると、田島はミットを高々とあげた。
「ストライク、バッターアウト!ゲームセット!」
ひとみの顔に安堵の表情が浮かんだ。そして、ナインがまるで優勝でもしたかのようにホームへ駈け出した。ひとみは苦労しながら165球の粘りのピッチングで勝利をもぎ取った。
「西応高校、奇跡的な逆転勝利でベスト16進出を決めましたぁ~!」
実況のアナウンサーが、マイクにかぶりつくように大きな声で西応の勝利を伝えた。
観客席の新田と晴美も両手をあげて、喜びを分かち合っていた。これでベスト16。本当の戦いはこれからだが、新田は今はこの勝利に素直に喜んでいた。
~つづく~