「浅野さんと、城谷の新田さんとは中学の頃は同じチームメイトで・・。今は別々の高校に進学して、いいライバルで大親友なんだ・・。1年生の時から、二人はエースで4番。おととしの都大会では、新田さんが完封勝利で甲子園に行き、ベスト4まで進んだ。去年は浅野さんがリベンジして都大会優勝。ベスト8まで進んだ。今年は本来なら新田さんと浅野さんが決着をつける年・・・。なんとなく申し訳ないような気がするね。まだ、決まったわけじゃないけど・・。」

「そっか、いいライバルなんだね。うらやましい。」

ひとみは遠くを見つめながら、弁当のおかずを一口口の中に放り込んだ。

田島はちらりとひとみに眼をやると、あとを続けた。

「城谷は、新田さんのチームと言っていい。新田さんは影の監督ともいわれているくらいだから。新田さんは、コントロールが抜群で、どちらかといえば力で押さえるより、打たせて取るタイプ。スピードは140キロがマックスかな・・。去年の予選でも、決勝も入れて2点しか入れられていないんだ。」

「打線の方は?」

ひとみが田島の顔を覗き込む。

「打線はどちらかというと、中距離打者が多いかな。ホームランをがんがん打つタイプじゃなくて、コツコツ当てて打線をつなげるタイプだよ。」

「そっかぁ。結構手ごわそうだね。」

ひとみがまた遠くに目を移す。

「結構どころか、すごい強豪だよ。」

田島は、少し自身なげな口調で言った。

「なあに?自信持ってよ、大丈夫!」

ひとみは、田島の大きな背中をたたいた。
それでも、田島は不安を隠せないでいた。本当に自分とひとみのバッテリーで通用するのだろうか?

「ねえ、相手打者のデーターとかあるのかな?少し勉強しておきたいから。」

ひとみの声に、田島が顔をあげた。

「たぶん、監督が持っていると思うよ。監督は、ああ見えて結構緻密なんだ。」

「そっか、それじゃ後で頼んでみようっと。」

ひとみは空になった弁当箱を包みなおすと、ぴょんと階段から飛び降りる。そして、田島の方を振り返りながら、笑顔いっぱいに言った。

「がんばろ!きっと勝てるよ!」

田島はいつもこの笑顔を見ると、なんとなくほっとする。彼女の笑顔は自分の心になにかパワーを与えてくれるようだった。田島も、弁当箱を包みなおすとゆっくりと立ち上がった。

~つづく~