次の日の昼休み、学食で食事を取ろうと席から立ち上がった田島に、ひとみが後ろから声をかけた。

「学食行くの?」

田島はゆっくりと振り返りながら、ただ頷いて返事をした。ひとみは、いつもの笑顔で続ける。

「一緒に食べようか?」

「・・え・・・。いいけど・・。」

ひとみと付き合うとは言ったものの、まだ田島の応対はぎこちない。田島の頭の中には、自分とこんなかわいい子が付き合うなどとは、自分自身でも信じられなかったのだ。

ひとみは、すっと自分のかばんから弁当箱を二つ取り出した。一つの弁当箱は普通の女子高生が食べるくらいのかわいいサイズだが、もう一つは2倍以上はあろうかという大きな弁当箱だ。ひとみは、その大きな弁当箱をすっと田島に差し出しながら言った。

「これ、キミの分。いっしょに作ってきちゃった。」

田島の頭の中は一瞬で真っ白になった。自分のために、ひとみは弁当を作ってきてくれたのか?田島はどう応対していいのか分からず、ただ、おずおずとその弁当箱を受け取った。

「今日は天気もいいし、外で食べない?クラブハウスのほうに行こうか。」

「あ・・・うん・・。」

田島にはそう答えるだけで精一杯だった。ひとみはうれしそうに微笑むと、自分の弁当箱を持って、先に教室を出て行く。田島は、あたりをきょろきょろしながら、遠慮がちに外へ出ようとする。と、教室の出口で晴美が声をかけた。

「しっかりしなさいよ、色男。」

とたんに田島の顔が真っ赤になる。晴美が自分とひとみのことを知っているとわかって、田島はあわててしまったようだ。晴美がさらに追い討ちをかけるように言った。

「ひとみを泣かせたら、私が許さないからね。それと、次の練習試合はちゃんとリードしなさいよ。」

田島は顔を伏せて、晴海の前から逃げるように走り出した。そんな田島の姿を、晴美は口元に笑みを浮かべながら見送った。






「どう?味は?」

「うん・・・美味しいよ・・・。」

クラブハウスの前の階段に腰を下ろしながら、二人は並んで弁当を食べていた。春の日差しが明るくあたたかい。

「そう、よかったぁ。私あまり料理に自信ないから、おかあさんに教わりながら作ったんだけど・・・。いいお嫁さんになれるかなぁ。」

田島は思わず喉に弁当を詰まらせそうになった。ごほごほと、むせこんでしまった。

「どうしたの?大丈夫?」

ひとみが優しく田島の大きな背中をさする。

『いいお嫁さんになれるかな』

そんな言葉が、田島の耳には毒だったらしい。もちろん、ひとみは大意なく話した言葉なのだが、ひとみとの付き合いにすら自信を持っていない田島にとっては、遠い先の自分とひとみとの関係を連想させたのだ。

ようやく、喉に詰まったものがぬけて、呼吸が落ち着いたところで、ひとみが話を続ける。

「ねえ、今度の相手の城谷って、どんな相手なの?一応勉強しておかなくちゃ。」

田島は、箸を止めると、ゆっくりと話し始めた。


~つづく~