秋も深まりつつある、10月のことだった。

矢島は大学のキャンパス内で次の講義に向かうため、本を読みながら講義のある校舎へ歩いていた。そのとき、後ろからやってきた同級生に声をかけられた。

「よう、矢島。」

「おう、お前も同じ講義だったっけ?」

矢島は自分の呼んでいた本をパタンと閉じた。同級生の青年が矢島に尋ねる。

「そういえば、矢島聞いたか?京子ちゃんのこと。」

「え?何のこと?」

矢島はきょとんとしている。青年が続ける。

「聞いてないのか?さっき、彼女の同級生の子に聞いたんだけど、今朝交通事故に巻き込まれたって・・。」

矢島の顔色が変わった。一瞬のうちに顔から血の気が引いていくのが分かる。矢島の頭の中に、過去の記憶がよみがえってきた。まさか・・・!矢島は取り乱しながら、青年の襟の辺りをつかんで言った。

「それで!・・・彼女は?京子ちゃんは・・!?」

青年は矢島の取り乱しようにびっくりしたようだったが、すぐに後を続けた。

「詳しいことはよく分からないよ・・・ただ、・・・たしか、駅前の病院に運ばれたって・・。」

矢島はその言葉を聞くか聞かないかのうちに、校門のほうに走り出していた。青年はその姿を見送りながら大声で叫んだ。

「お~い、矢島!講義はどうするんだ!」

もはや矢島の耳にその声は届いていなかった。ただ、京子の容態だけが気がかりで、夢中で走っていた。


=つづく=