「私本当に昔からこんななんです。人前でしゃべったりするのが苦手で、・・・びくびくしてるっていうか・・・人の目を見て話すこともできなくて・・・こういうの、対人恐怖症・・・っていうんですかね・・・。」

そういいながら、京子はやはり由加利と目を合わせようとせず、下をむいたまま話を続けた。

「自信がないんです・・自分に・・・。何をやってもうまくいかないし・・・できないんです。ほかの人みたいに、何でもできればいいんでしょうけど・・・私にはできないんです。」

京子はますます方をすぼめて、小さくなっていく。よほど自分というものに自信がもてないようだ。声もだんだんか細くなるばかりだ。

「だから、好きな人とか・・あこがれてる人とか・・・遠くから見てることくらいしかできないんです。」

「でも、京子ちゃんはこうして矢島君の入っていったお店まで来て、様子まで見てたじゃない?それって、すごい行動力だと思うわよ。」

由加利がフォローしたが、京子は首をぶるぶると振って否定した。

「とんでもないです・・私のしてることなんか・・・ただのストーカーみたいで・・・。」

由加利の言葉にも、どうしてもネガティブな発想しか出てこないらしい。

「・・・遠くで見てるだけでいいんです・・・・私にはそれで・・・十分だと思います。矢島先輩にはもっといい人がいると思います・・・でも、・・・遠くで見てるくらいは・・それくらいはいいかなって・・・。」

そう言いながら、京子は完全に下を向いてしまった。
由加利はそんな京子を見て、ふっとため息をもらした。どうして、ここまで自信をなくしてしまったのだろう。どうして、そこまで自分を下げた見方しかできないのだろう。きっと、何か原因があるのだろうが、今それを京子に聞いても答えてはくれそうになかった。

由加利は店のナプキンを一枚取ると、ポケットにしまってあったボールペンでなにやらメモを走らせた。そして、それを書き終わると、京子の目の前に差し出した。

「これ、私のメアド。京子ちゃんのも教えてくれる?矢島君が来たときメールで教えてあげる。そこで、矢島君とどんなお話しするかは、京子ちゃん次第。京子ちゃんだって、矢島君ともっと近くで見たいんでしょ?機会はちゃんと作ってあげるから、心配しないで。それに、矢島君優しいし、きっと京子ちゃんがこのお店に来てくれるの、きっと歓迎してくれると思うの。だから、あんまり自分のこと悪く言わないでね。そんなこと話したら、矢島君だって引いちゃうよ。」

京子はその言葉に、ふっと顔を上げた。そして、今日はじめて京子は由加利と視線をあわせた。京子は由加利の瞳の奥に、「まかせて」という言葉を見たような気がした。
京子は自分のバックをあけ、恐る恐る携帯電話を取り出した。

=つづく=