京子はまた遠慮がちにオレンジジュースを受け取ると、一口のんだ。まだ、緊張しているらしい。由加利はなんとか緊張をほぐしたいと、とにかく話を続けた。
「矢島君よくここにくるから、時々顔を出せば会えるわよ。こんど、来たとき連絡してあげようか?」
「え・・・・いえ・・・そんなこと・・・。」
京子はますますもじもじしている。心なしか頬の辺りが赤くなっている。由加利は、京子が矢島に好意を抱いていることがはっきりと感じ取った。
「あなた、矢島君が好きなんでしょ?」
あまりにストレートな一言に、京子は耳まで真っ赤にして、ますます下を向いた。そして、蚊のなくような小さな声で答えた。
「・・・そんな・・・好きだなんて・・・ただ、その・・憧れてるだけで・・」
必死に否定しているが、図星を指されて狼狽しているのは明らかだった。そんな京子の反応が妙にかわいらしく由加利には思えた。
「憧れてねぇ・・・。私にも覚えがあるなぁ。中学のときの同じ部の先輩なんだけど、憧れの先輩でね。高校もその先輩と同じ高校に行っちゃったのよ。でも、結局はなにもなかったけどね。」
「そ・・そうなんですか・・。由加利さんは、いまはお付き合いしてる人いらっしゃるんですか。」
「うーん、微妙な質問だなぁ。いるといえばいるけど、あいつ全然好きだとか言ってくれないから、ちょっとやきもきしてるかなぁ。あ、安心してね。矢島君じゃないから、相手は。」
京子は少しほっとしたような表情を見せた。由加利のことを矢島の彼女ではないかと心配していたようだ。
「矢島君、すごく優しいでしょ?でも、意外とこういうこと鈍いから、少し積極的に行かないと、気づいてくれないよ。」
「そんなぁ・・積極的なんて。わたしには・・・とても・・・。」
京子はまた下を向いてしまう。本当に昔の矢島を見ているようだ。この子も、矢島と同じような辛い過去があるのだろうか?ふと、由加利の脳裏にそんなことがよぎった。
「それとなく、誕生日とか教えたら?矢島君義理堅いところあるから、なにかプレゼントくらい用意するわよ、きっと。京子ちゃんは、誕生日はいつ?」
京子はうつむいたまま答える。
「似合わないんですよ、誕生日・・・わたしには全然不似合いで・・・。」
「あれ?ひょっとして、イブとか?」
由加利が後ろの棚に、磨いたグラスを並べながら言った。京子は遠慮がちに続けた。
「2月14日・・・バレンタインなんです、誕生日・・・私には縁遠い日なんですけど・・。」
由加利は一瞬息を呑んだ。おもわず手に力が抜け、手からワイングラスが落ちた。静かだった店内に、ガラスの割れる音が響いた。
=つづく=
「矢島君よくここにくるから、時々顔を出せば会えるわよ。こんど、来たとき連絡してあげようか?」
「え・・・・いえ・・・そんなこと・・・。」
京子はますますもじもじしている。心なしか頬の辺りが赤くなっている。由加利は、京子が矢島に好意を抱いていることがはっきりと感じ取った。
「あなた、矢島君が好きなんでしょ?」
あまりにストレートな一言に、京子は耳まで真っ赤にして、ますます下を向いた。そして、蚊のなくような小さな声で答えた。
「・・・そんな・・・好きだなんて・・・ただ、その・・憧れてるだけで・・」
必死に否定しているが、図星を指されて狼狽しているのは明らかだった。そんな京子の反応が妙にかわいらしく由加利には思えた。
「憧れてねぇ・・・。私にも覚えがあるなぁ。中学のときの同じ部の先輩なんだけど、憧れの先輩でね。高校もその先輩と同じ高校に行っちゃったのよ。でも、結局はなにもなかったけどね。」
「そ・・そうなんですか・・。由加利さんは、いまはお付き合いしてる人いらっしゃるんですか。」
「うーん、微妙な質問だなぁ。いるといえばいるけど、あいつ全然好きだとか言ってくれないから、ちょっとやきもきしてるかなぁ。あ、安心してね。矢島君じゃないから、相手は。」
京子は少しほっとしたような表情を見せた。由加利のことを矢島の彼女ではないかと心配していたようだ。
「矢島君、すごく優しいでしょ?でも、意外とこういうこと鈍いから、少し積極的に行かないと、気づいてくれないよ。」
「そんなぁ・・積極的なんて。わたしには・・・とても・・・。」
京子はまた下を向いてしまう。本当に昔の矢島を見ているようだ。この子も、矢島と同じような辛い過去があるのだろうか?ふと、由加利の脳裏にそんなことがよぎった。
「それとなく、誕生日とか教えたら?矢島君義理堅いところあるから、なにかプレゼントくらい用意するわよ、きっと。京子ちゃんは、誕生日はいつ?」
京子はうつむいたまま答える。
「似合わないんですよ、誕生日・・・わたしには全然不似合いで・・・。」
「あれ?ひょっとして、イブとか?」
由加利が後ろの棚に、磨いたグラスを並べながら言った。京子は遠慮がちに続けた。
「2月14日・・・バレンタインなんです、誕生日・・・私には縁遠い日なんですけど・・。」
由加利は一瞬息を呑んだ。おもわず手に力が抜け、手からワイングラスが落ちた。静かだった店内に、ガラスの割れる音が響いた。
=つづく=