さて、農薬が悪者にされている原因のひとつには、その毒性をあげる人が多いでしょう。確かに、薬剤によっては毒性が強いものもありますが、農薬の場合はかなり厳しい試験を重ねて、きちんと使いさえすれば、それによって人体や環境に及ぼす影響が少ないものしか現在では登録されていません。すなわち、国産の野菜を食べている限りにおいては、農家の方がきちんと使用している限りは心配するようなことは起こりえないでしょう。

それでも、農薬は信用できないという方も多いと思います。
そこで、トマトを例にこんなデーターを出してみたいと思います。

トマトには微量ですが「トマチン」というアルカロイドが含まれています。これは、前の記事で書いた害虫や病気から身を守るための免疫にあたるものです。トマチンの毒性を数値化するとLD50(半数致死量:体重1キログラム当たりどれくらい摂取すれば、半数が致死に至るかという数値)は32mg/kgです。これを体重50kgの人におきかえると、1600mg(つまり1.6g)で半数が致死に至る計算になります。
完熟トマトの中には1kgあたり0.4mg程度のトマチンが含まれているといわれていますので、一気に4トンのトマトを食べると致死にいたることになります。まあ、こんなことは非現実的なのですが・・。ただ、花には1キロあたり1100mg、未熟果実には465mg、熟したもので48mgほど含まれていますので、まだ青い部分が残っている果実なら33kg食べると致死量です。未熟な果実だと4キロも食べればアウトです。こう考えるとちょっと怖いと思いませんか?

さて、一方農薬のほうはというとどうでしょうか?
ごく一般的に使用されている有機リン系の殺虫剤で見てみましょう。有機リン系の薬剤はサリン事件の影響で、特に敵視されている化合物ですが、もっとも使用量が多いと思われる有機リン剤のLD50は、およそ2000mg/kg以上です。つまり2gですね。体重50kgに換算すると100gを一気に飲めば致死量ということになります。つまり農薬1本を丸々飲まないと致死量に至らないということです。
殺虫剤として使用する場合、これを1000倍程度に希釈したものを使用します。これがいくらかかったところで、果実ひとつに1gも付着することはまずありえません。1g付着させるには果実1個に1ℓを散布することになりますから、そんな散布はできません。せいぜいトマト1株に1ℓ散布すれば多いほうでしょう。そして、その多くは葉や茎といった可食部ではないところにかかりますから、トマトにかかる薬はごく僅かです。仮に、一本のトマトの株に1000倍希釈液が1ℓ撒かれ、その株に20個の実が収穫されたとした場合、およそ7割は地面や葉や茎にかかるとして計算すると、一個あたり15mgが付着する計算です。それがまったく分解されないで、人の口に入った場合100g以上を摂取するためには2800個以上食べないといけません。一個が約100gとすると280キロです。これだけ食べるなどとても考えられませんが、もし食べることができたとしても、農薬の影響で死ぬ前に、トマチンの毒で死んでしまうでしょう。そう、トマチンは完熟でなければトマトを4キロ食べれば致死量なのですから・・・。

毒性自体はトマチンよりも低く、また分解されてわずかしか残らない農薬がそれほど危険なものでしょうか?日本で登録されている農薬は、安全性がかなり厳しくチェックされているので、それほど怖がる必要はないと思います。
みなさんはどう思われますか?