翌日、まひるはいつもより楽しそうだった。矢島からメールをもらったことが、よほどうれしかったのだろう。矢島とまた少しだけ近づいたような気持ちになっていたにちがいない。
まひるは、教室で矢島を見つけると、すぐ手をふりながら近づいた。

「きのうはありがとう。メールくれて。」

「え?矢島君、ケータイ買ったんだ。」

うしろにいた由加利が驚いたように言った。

「ねえさんから、プレゼントでもらったんだ。誕生日の・・。」

「え!矢島君きのう誕生日だったんだ。おめでとう。」

矢島が少してれくさそうに、頭をかいた。

「おし、それじゃぁ、私のも教えてしんぜよう。」

由加利が自分の携帯を取り出す。
早瀬も近寄って来て、声をかける。

「えらい進歩だな矢島。俺にもアド教えとけ。」

「えっと、・・・これが、アドだよ・・。」

矢島が携帯のアドレスを見せる。二人は、手ぎわよくアドレスを打ちこむと、送信ボタンを押す。矢島の着信音が鳴る。

「これで、みんなメールできるようになったね。」

まひるはうれしそうだ。そしてすぐに、次の提案をする。

「ねえ、夏になったら、この4人で海にでもいかない?」

「はぁ?ずいぶんとまあ気が早いな。まだ梅雨だぞ。」

早瀬はちょっとあきれ顔だ。しかしまひるはそんなことは、おかまいなしのようだ。

「いいじゃない。楽しいことは早く決めちゃったほうが。由加利もいいでしょ?」

「海はいいけど、なんでこいつといっしょなの?」

由加利はちょっと冷たい視線を早瀬に送る。

「いいじゃない、最近二人仲良さそうだし・・・それとも、大川先輩と何か予定でもあるのかなぁ?」

「ちょっと!まひるぅ!!」

まひるにひやかされて、由加利は大あわてだ。

「大川先輩って??」

何も知らない矢島がまひるにきいた。まひるは、矢島の耳に顔を近づけると、ひそひそ声で答える。

「あのねぇ、由加利はねぇ・・・」

「わあぁ~~~~!!まひるってばぁ~~!!」

由加利のあわてように、矢島が思わず吹き出す。それを見た由加利が矢島を見てむっとしたように言った。

「わ、笑ったなぁ~!こいつめ!」

由加利がこつんと矢島の頭をこづいた。

「あ、ごめんごめん。・・・つい・・・ははは。」

矢島は笑いをこらえながら言った。
それをまひるもうれしそうに見ていた。

まひるは学校内で矢島が笑ったのを初めて見た気がした。それほど矢島が笑ったことがなかった。笑ったときの矢島の顔は、本当にさわやかにまひるの目にはうつった。いつも矢島にこんな笑顔があればいいのに。そう思った。

=つづく=