翌日、ちょっと疲れた表情の矢島がいた。さすがに一日女の子とすごしたのははじめてだけに、予想以上に気を使ってしまっていたらしい。夕べもあまりよく眠れずにいた。
一方のまひるのほうは、元気一杯である。
矢島が来てくれたうれしさに、由加利と話し込んでいる。
「え?ほんとに来たの?あいつが?」
由加利が驚いたのも無理はない。一度はすっぽかしていた矢島が、急に来るなんてどうしたんだろう。
しかし、由加利には心当たりがあった。
由加利は早瀬のほうに目をやった。
早瀬は由加利の視線に気がつくと、ぐっと親指をだして合図した。それで、由加利にはすべてが理解できたようだ。
由加利はゆっくりと早瀬に近づいていくと、小声で言った。
「あんたは、あんまり気にいらないけど、とりあえず、お礼は言っておくね。」
早瀬が苦笑する。
「できることをやっただけのことさ。ああでもしなきゃ、やつはまたすっぽかしてたろうからな。」
本当にそうだ。
矢島の性格を考えれば、自分から率先してくるなどとは到底考えられない。しかし、まひるはそんなことなど気づく様子もなく、喜んでいる。
まあ、それでいいか・・と由加利は思った。
とりあえず、第一関門は突破というところだろう。
「でも、これからどうするつもりかしらね、まひるは。」
由加利は矢島にうれしそうに話しかけているまひるを見ながら言った。
「さあ・・・ま、とりあえず、何かのきっかけだけはできたから、もうまひるに対しては前ほどの警戒心はなくなってるだろうけどね。」
早瀬は立ち上がると、ゆっくりと矢島とまひるの方へ歩き出した。由加利もつづく。
「よ、お二人さん。ずいぶん楽しそうだな。」
早瀬がいきなり冷やかすように言った。矢島は目を伏せたが、まひるはいつもどおりあっけらかんとした表情で答えた。
「だって、昨日は楽しかったもの。ね、矢島くん?。」
矢島はどう答えていいのか分からず、目をそらしたままだ。まひるがかまわず話を続ける。
「本当にあそこはよかったよ。動物に直接触れたりするところもあって、そこでうさぎとかハムスターとかだっこしてきちゃった。なんか、私も動物ほしくなってきちゃったな。特にハムスターなんか、かわいいし、飼ってみようかな。」
「ハムスターねぇ・・・確かにかわいいかも。」
由加利が相槌をうつ。矢島が遠慮がちに口をひらいた。
「ハムスターだったら、うちにいるけど・・・最近子供が生まれて、大分大きくなってきてるんだ。もし、よかったら沢野さん・・・いる?」
「え~~ほんと?うれしい!」
早瀬の冷やかしには黙っていた矢島だったが、まひるの言葉には遠慮しながらもなんとか応対している。
これは矢島にとってはかなりの進歩だと、早瀬も由加利も思っていた。どうやら、昨日の一日はすこしだけでも二人を近づけたらしい。
「じゃあ・・今度持ってくるよ。」
矢島が少し、テレながら答えた。
「あ、もしよかったら、矢島くんの家にもらいにいくよ。直接子供たちも見たいし。あ、そうだ、由加利も一緒に行こうよ。」
「え、なんで私が・・・」
と由加利が言いかけたところで、早瀬が由加利の背中をつついた。由加利が早瀬のほうを見ると、「行ってやってくれ」という目で由加利を見ていた。もし由加利が行かなかったら、矢島はよけい気を使ってせっかくの前進のチャンスを逃してしまうかもしれないと、早瀬は思ったようだ。
由加利はひとつため息をつくと、頭をかきながら言った。
「・・・ま、いいでしょ。私もいくわよ。私も動物嫌いじゃないしね。」
「じゃ、決まりね。今度の日曜どう?」
ここまで言われて矢島もさすがに断れなかった。
早瀬はにんまりとしながら、矢島のほうに目をやった。これで少しでも、コンプレックスがなくなってくれるきっかけになってくれれば・・そう思っていた。
=つづく=
一方のまひるのほうは、元気一杯である。
矢島が来てくれたうれしさに、由加利と話し込んでいる。
「え?ほんとに来たの?あいつが?」
由加利が驚いたのも無理はない。一度はすっぽかしていた矢島が、急に来るなんてどうしたんだろう。
しかし、由加利には心当たりがあった。
由加利は早瀬のほうに目をやった。
早瀬は由加利の視線に気がつくと、ぐっと親指をだして合図した。それで、由加利にはすべてが理解できたようだ。
由加利はゆっくりと早瀬に近づいていくと、小声で言った。
「あんたは、あんまり気にいらないけど、とりあえず、お礼は言っておくね。」
早瀬が苦笑する。
「できることをやっただけのことさ。ああでもしなきゃ、やつはまたすっぽかしてたろうからな。」
本当にそうだ。
矢島の性格を考えれば、自分から率先してくるなどとは到底考えられない。しかし、まひるはそんなことなど気づく様子もなく、喜んでいる。
まあ、それでいいか・・と由加利は思った。
とりあえず、第一関門は突破というところだろう。
「でも、これからどうするつもりかしらね、まひるは。」
由加利は矢島にうれしそうに話しかけているまひるを見ながら言った。
「さあ・・・ま、とりあえず、何かのきっかけだけはできたから、もうまひるに対しては前ほどの警戒心はなくなってるだろうけどね。」
早瀬は立ち上がると、ゆっくりと矢島とまひるの方へ歩き出した。由加利もつづく。
「よ、お二人さん。ずいぶん楽しそうだな。」
早瀬がいきなり冷やかすように言った。矢島は目を伏せたが、まひるはいつもどおりあっけらかんとした表情で答えた。
「だって、昨日は楽しかったもの。ね、矢島くん?。」
矢島はどう答えていいのか分からず、目をそらしたままだ。まひるがかまわず話を続ける。
「本当にあそこはよかったよ。動物に直接触れたりするところもあって、そこでうさぎとかハムスターとかだっこしてきちゃった。なんか、私も動物ほしくなってきちゃったな。特にハムスターなんか、かわいいし、飼ってみようかな。」
「ハムスターねぇ・・・確かにかわいいかも。」
由加利が相槌をうつ。矢島が遠慮がちに口をひらいた。
「ハムスターだったら、うちにいるけど・・・最近子供が生まれて、大分大きくなってきてるんだ。もし、よかったら沢野さん・・・いる?」
「え~~ほんと?うれしい!」
早瀬の冷やかしには黙っていた矢島だったが、まひるの言葉には遠慮しながらもなんとか応対している。
これは矢島にとってはかなりの進歩だと、早瀬も由加利も思っていた。どうやら、昨日の一日はすこしだけでも二人を近づけたらしい。
「じゃあ・・今度持ってくるよ。」
矢島が少し、テレながら答えた。
「あ、もしよかったら、矢島くんの家にもらいにいくよ。直接子供たちも見たいし。あ、そうだ、由加利も一緒に行こうよ。」
「え、なんで私が・・・」
と由加利が言いかけたところで、早瀬が由加利の背中をつついた。由加利が早瀬のほうを見ると、「行ってやってくれ」という目で由加利を見ていた。もし由加利が行かなかったら、矢島はよけい気を使ってせっかくの前進のチャンスを逃してしまうかもしれないと、早瀬は思ったようだ。
由加利はひとつため息をつくと、頭をかきながら言った。
「・・・ま、いいでしょ。私もいくわよ。私も動物嫌いじゃないしね。」
「じゃ、決まりね。今度の日曜どう?」
ここまで言われて矢島もさすがに断れなかった。
早瀬はにんまりとしながら、矢島のほうに目をやった。これで少しでも、コンプレックスがなくなってくれるきっかけになってくれれば・・そう思っていた。
=つづく=