矢島はとぼとぼと家への道を歩いていた。
矢島は、重たい気持ちのまま家のドアを開けた。
「ただいま。」
矢島が力なく玄関に入ってくる。家の奥から母の声。
「おかえり。」
矢島は無言のまま、脱いだ靴を靴箱に押し込む。矢島はそのまま二階の自分の部屋へ向かった。
部屋の扉を開けると、プンと独特のにおいがする。
部屋の片隅には、いくつかのケージが置かれ、そこに矢島の飼っているハムスターとチンチラが矢島の帰りを待っていた。
「ワンワン!」
いつの間にか、矢島の足元には愛犬のポメラニアンがじゃれ付いている。
「ただいま」
矢島は笑みを浮かべながら、愛犬の頭をなでる。愛犬は矢島の手にじゃれ付いて、一生懸命その手をなめてくる。矢島は、そんな愛犬の姿に微笑みながら言った。
「ちょっと待っててくれよ。すぐ遊んでやるから。着替えるまでまっててな。」
その矢島の言葉が分かってか、ポメラニアンは階段をとことこと駆け下りていった。
矢島は上着のブレザーを脱いで、ハンガーにかける。ポケットにはまだ、まひるのメモが残っている。矢島はそれを取り出すと、ぐしゃぐしゃになった紙を再び広げた。
sunsdaughter@○○○○○.ne.jp
まひるのアドレスだ。sunsdaughter・・おそらく自分の名前から取ったのだろう。太陽の娘ということらしい。
矢島はそのメモを、自分の机の引き出しの中にしまいこんだ。
決して使うことのないだろうそのアドレスを、矢島は封印してしまうつもりらしい。
矢島は大きくため息をつくと、階下のリビングへ向かった。
リビングでは矢島の母親が忙しく夕食の支度に追われていた。
矢島はそんな母の背中に向かって、あらためて「ただいま」と言った。
「おかえり」という母親の言葉に、矢島はようやくほっとしたような表情を浮かべる。矢島にとってはここが一番安全な場所だからだ。
矢島は冷蔵庫から、コーラを取り出すと缶を開けてぐっと一口のみこんだ。
「ねえ、かあさん・・」
矢島が母親に言った。
「ん?何?」
「携帯って、高いのかな・・・」
自分の口から出てきた言葉に、矢島は自分でもびっくりした。何を言い出してるんだ俺は・・
「携帯?そういえば、もう高校生だものね。ほしいの?」
母親は事情も知らずに矢島に問い返した。
矢島はあわてて首を振った。
「いや、なんでもない・・いいよ・・ごめん。」
矢島はそれだけ言うとそそくさとリビングを出て行ってしまった。そんな姿を母親が不思議そうに首をかしげる。それと入れ替わりに玄関から声がする。
「ただいま~~」
矢島の姉、洋子が帰ってきたらしい。
洋子は乱暴に靴を脱ぎ捨てると家の中に入ってきた。それとすれ違うように矢島が二階へ駆け上がっていった。洋子は不思議そうに弟の背中を見送った。
「どうしたの、かあさん。健一、様子が変な感じだったけど。」
どさりとリビングのソファーに自分のバックを放り出しながら、洋子が尋ねる。
「ん?・・・ああ、健一ね。なんか、携帯って高いのか・・とか聞いただけで、そそくさと出ていっちゃったけど。」
「ふうん・・・。」
洋子は、さっき矢島が上って行った階段のほうに目をやりながら言った。
=つづく=
矢島は、重たい気持ちのまま家のドアを開けた。
「ただいま。」
矢島が力なく玄関に入ってくる。家の奥から母の声。
「おかえり。」
矢島は無言のまま、脱いだ靴を靴箱に押し込む。矢島はそのまま二階の自分の部屋へ向かった。
部屋の扉を開けると、プンと独特のにおいがする。
部屋の片隅には、いくつかのケージが置かれ、そこに矢島の飼っているハムスターとチンチラが矢島の帰りを待っていた。
「ワンワン!」
いつの間にか、矢島の足元には愛犬のポメラニアンがじゃれ付いている。
「ただいま」
矢島は笑みを浮かべながら、愛犬の頭をなでる。愛犬は矢島の手にじゃれ付いて、一生懸命その手をなめてくる。矢島は、そんな愛犬の姿に微笑みながら言った。
「ちょっと待っててくれよ。すぐ遊んでやるから。着替えるまでまっててな。」
その矢島の言葉が分かってか、ポメラニアンは階段をとことこと駆け下りていった。
矢島は上着のブレザーを脱いで、ハンガーにかける。ポケットにはまだ、まひるのメモが残っている。矢島はそれを取り出すと、ぐしゃぐしゃになった紙を再び広げた。
sunsdaughter@○○○○○.ne.jp
まひるのアドレスだ。sunsdaughter・・おそらく自分の名前から取ったのだろう。太陽の娘ということらしい。
矢島はそのメモを、自分の机の引き出しの中にしまいこんだ。
決して使うことのないだろうそのアドレスを、矢島は封印してしまうつもりらしい。
矢島は大きくため息をつくと、階下のリビングへ向かった。
リビングでは矢島の母親が忙しく夕食の支度に追われていた。
矢島はそんな母の背中に向かって、あらためて「ただいま」と言った。
「おかえり」という母親の言葉に、矢島はようやくほっとしたような表情を浮かべる。矢島にとってはここが一番安全な場所だからだ。
矢島は冷蔵庫から、コーラを取り出すと缶を開けてぐっと一口のみこんだ。
「ねえ、かあさん・・」
矢島が母親に言った。
「ん?何?」
「携帯って、高いのかな・・・」
自分の口から出てきた言葉に、矢島は自分でもびっくりした。何を言い出してるんだ俺は・・
「携帯?そういえば、もう高校生だものね。ほしいの?」
母親は事情も知らずに矢島に問い返した。
矢島はあわてて首を振った。
「いや、なんでもない・・いいよ・・ごめん。」
矢島はそれだけ言うとそそくさとリビングを出て行ってしまった。そんな姿を母親が不思議そうに首をかしげる。それと入れ替わりに玄関から声がする。
「ただいま~~」
矢島の姉、洋子が帰ってきたらしい。
洋子は乱暴に靴を脱ぎ捨てると家の中に入ってきた。それとすれ違うように矢島が二階へ駆け上がっていった。洋子は不思議そうに弟の背中を見送った。
「どうしたの、かあさん。健一、様子が変な感じだったけど。」
どさりとリビングのソファーに自分のバックを放り出しながら、洋子が尋ねる。
「ん?・・・ああ、健一ね。なんか、携帯って高いのか・・とか聞いただけで、そそくさと出ていっちゃったけど。」
「ふうん・・・。」
洋子は、さっき矢島が上って行った階段のほうに目をやりながら言った。
=つづく=