その日の昼休み、まひるはクラスメートの早瀬明を屋上に呼び出していた。

「で、俺に話って・・何?」

スポーツマンで剣道の有段者である早瀬は、すでにクラスメートの女子からは、かなりの人気者になっていた。早瀬はことあるごとに自分の回りでさわぎたてられて、少々うとましく思っていたのである。だから、まひるに呼び出されたのも、あまり心よく思ってはいないようだった。
しかし、まひるが早瀬を呼び出したのは別の理由があった。

「早瀬君って、確か矢島君と同じ中学校出身だったよね?」

早瀬はちょっと不思議そうな表情を浮かべた。

「ああ、小学校からいっしょだぜ。それがどうかしたのか?」

「そう・・小学校からいっしょなら、なお知ってるよね、矢島君のこと。」

「・・・・ああ・・。それが、どうした?」

早瀬は、まひるの質問の意味が理解できないようだった。
まひるが、あとを続ける。

「矢島君、入学の時からあんなふうでしょ?どうしてなのか、知りたくて。」

「知ってどうする?人には知られたくないことだって、あるだろう?」

早瀬はまひるをたしなめるように言った。どうやら、まひるの思ったとおり、矢島のことをよく知っているらしい。

「だって、気になるでしょ?同じクラスメートだもの。なにか悩みがあるなら、力になってあげたいじゃない。」

「おまえ・・・本気でそう思ってる?ただの好奇心じゃないのか?もしそうなら、俺は話さんぞ。」

早瀬はちょっと怒ったようなロ調で言った。しかし、まひるは大きく首をふって否定した。

「そんなことないよ。クラスのみんなとは、誰とだって仲良くなりたいもの。早瀬君だって、そうじゃないの?」

早瀬はちょっとあっけにとられたような表情を浮かべたが、すぐに苦笑しながら言った。

「まったく、お前とんでもなく人のいいやつだな。物好きというか。・・・まあいい。そんなに知りたいなら話をしてやってもいいが、聞いたところで、どうにもならないぞ。それでもいいのか?」

「どうにかなるかならないかは、聞いてみないとわからないじゃない。」

まひるの目は真剣だった。早瀬は、そのまひるの目を見て、ようやく話す気になったらしい。

「そんなに言うなら話してやるよ。でも、やつの気持ちはそうかんたんには動かないぞ。」

そう言って、早瀬は屋上のフェンスによりかかりながら、ゆっくりと話をはじめた。

=つづく=