「そうだ!」

まひるは何か思いついたように立ち上がった。隣に座っていたゆかりがびっくりしたように言った。

「なによ、突然?」

「いいこと、思いついたの。矢島君のメアド教えてもらおっと。ほかのクラスメートにはメアド交換したけど、彼だけまだだったもの。」

「ええ~~!?まひる、まさかクラス全員のメアド教えてもらったわけ~~??まったくこまめというか、なんというか・・・。」

由加利は、半ばあきれ返ったように言った。まあ、まひるの性格ならありえるかなと、由加利は考えていた。まひるは中学時代から誰とでも同じように友達になりたがっていた。友達が多いことが、まひるにとってはうれしいのだ。それは、今も変わらないらしい。

「あ、矢島君!」

教室に戻ってきた矢島を見つけると、まひるは小走りで矢島のほうに向かった。
突然声をかけられ、近づいてきたまひるに矢島はちょっとびくりとした表情を見せた。
そんな矢島の表情に、まひるは小首をかしげながら言った。

「あのね、矢島君のメアド教えてくれないかな?他の人にはみんな教えてもらったんだ。」

まひるはうれしそうに携帯のアドレス帳一杯にならんだクラスメートのアドレスを見せながら、ちょっと得意そうに言った。

「ね、教えて。メアド。」

矢島は戸惑ったような表情を見せながら、うつむき加減に言った。

「・・・俺・・・携帯持ってないから・・・。」

まひるは「え?」っというような表情を見せた。

「持ってないんだ、携帯・・・。」

まひるは残念そうにうつむいた。しかし、すぐに笑顔を取り戻すと、明るく言った。

「携帯持ってると便利だよ、いつでも友達とお話もできるし、メールだって楽しいし。」

しかし、矢島は首を振りながらつぶやいた。

「持ってても・・・使うような相手いないから・・。」

「そんなことないよぉ。そうだ、これ持ってて!」

まひるは、ポケットから小さなメモ帳を取り出すと、なにやらそこにペンを走らせた。
そして、何かをメモした紙を矢島に差し出した。

「これ、私のメアド。こんど携帯買ったら、必ずアドレス帳に入れておいてね。」

まひるは、半ばむりやりその紙を矢島に握らせると、すぐにその場を離れた。
そのやり取りの一部始終を見ていた由加利は、ため息混じりにつぶやく。

「いまどき珍しいね。。携帯も持ってないなんて。家が貧しいわけでもないだろうにね。」

まひるも「そうだね・・」と、まひるには珍しい暗い口調で答えた。
ほんとにそうだ、携帯なんて今は学生の必須アイテムだというのに、持ってないなんて。本当に友達がいないのだろうか?まひるには矢島のことが理解できなかった。しかし、それだからこそ矢島のことを知りたいとまひるは思った。

=つづく=