「ねえ、もうクラブどこに入るか決めてるの?」

まひるの、中学校からの親友の加納由加利がまひるに声をかけた。

「まだよぉ。由加利はもう決ってるんでしょ?」
「あったり~~。」

由加利がふざけたようなロ調で言った。まひるが、そんなおどけた由加利を上目づかいにひやかすような目線を送りながら言った。

「美術部でしょ?はぁ~~いいわねぇ。中学校時代からのあこがれの大川先輩がいる部よねぇ、由加利は。。この高校に決めたのも、大川先輩がいるからっていう、もっぱらのうわさだしぃ。。」
「しぃ~~っ!!声がでかいって!!」

由加利があわてて、まひるのロをふさごうとする。

「あはは!おっかしぃ~~。赤くなってんの!」

まひるが追いうちをかける。
由加利は耳まで真っ赤にして、周りに聞かれていないか、きょろきょろと見周した。由加利は、なんとかはぐらかそうとして、まひるに聞いた。

「あんたこそどうするのよ?やっぱり放送部?」

まひるは、中学校時代放送部でアナウンスを担当していた。まひるの通るすんだ声はアナウンス担当の女子の中でも、ひときわ人気があった。

「う~ん・・どうしようかなぁ。野球部なんかのマネージャーもいいかなって、思うんだよね。私そういうの好きだし。」

まひるは、肘を机について考えながら答えた。
ふと、まひるの頭に矢島の事がうかんだ。そういえば、彼はどのクラブに入るんだろう?ふと気になったまひるは、矢島の席の方を振り返った。ちょうど矢島が席を立とうとしているところだった。まひるが声をかける。

「ねえ、矢島君!矢島君は、どのクラブにするか決めたの?」

矢島は少しおどろいたように立ち止って、まひるの方へ目をやったが、すぐに視線をそらして、独り言のように答えた。

「俺・・・そういうの好きじゃないから・・・。」

それだけ言うと、まるで逃げるような足どりで、教室の外へ出て行ってしまった。まひるは、ただそれを目で追っていた。
由加利が小声で言う。

「あの子、変ってるよねぇ。ほとんどー日中ー人でいるみたいだし、口きくのもほとんど見たことないもの。暗いっていうか、ほんと変ってる。」

まひるは、そんな由加利の言葉をまるで聞き流すように、矢島の背中を見送った。とにかく友人と楽しく過ごすのが大好きなまひるにとって、矢島の行動は不思議でならなかった。矢島にとって、楽しいことはないのだろうか。そういえば、矢島が笑っているところを、まだまひるは見たことがなかった。入学式から、もうー月がたとうとしているのに、まだクラスになじんでいる様子がない。そんな矢島のことが、まひるは気になって仕方なかった。元々おせっかいやきの性格のまひるには、なおさらである。

「ちょっとぉ~聞いてるの?」

まひるは、由加利の声で我に返った。あわてて、まひるが言う。

「あ?・・・え?・・何だっけ?」
「もう・・何だっけって何よ?まだ、あの矢島って子の事気になってるの?ほっとけばいいのよ、あんな暗いやつ。・・・まひる、まさかまたあんた、おせっかいを考えてる訳じゃあないよね?」

由加利が釘をさすように言う。まひるは黙ってうなづくと言った。

「だって、気になるんだもの。いつも一人で、なにか悩み事でもありそうで。」

由加利が大きくため息をつく。

「あ~あ。ほんと人がいいんだから、まひるは。。。そこが、いいとこなんだけどさぁ。でも、あたしを巻き込まないでよね。」

まひるは、そんな由加利のことなど無視するように、矢島の事を考えていた。

=つづく=