===昔は犬が好きではなかった===

今はもちろん大好きです。でも、昔はそれほど好きではなかったんです。
吼える・かまれる・・・・むしろ、怖い気持ちのほうが強かったんです。
いじめられっ子だった私は、小学生のころ犬をけしかけられたことがあって、そのときの恐怖心が影響していたのかもしれません。そのときは本当に「殺される~~~!!」と、思いましたから。
でも、そんな私にとって、忘れることのできない出会いが私を本当の犬好きに変えたのです。

===びっこの野良犬===

それは私が自転車を押しながら、あるいていたときのことでした。学校が休みの日だったか、それとも放課後家に帰った後だったか、とにかく一人で自転車を押していました。
ふと前を見ると、白い犬がびっこを引いて歩いています。結構大きな犬です。
ぴょこん  ぴょこたん
怪我をしているのは間違いなさそうです。
わたしは思わずその犬に「おい」と声をかけていました。普段だったら、ちょっとはなれて様子をみるくらいだったでしょうが、そのときは思わず声をかけていたのです。私の声にその犬はゆっくりこっちを振り向きました。首からはビニールの紐をぶら下げて、首輪はつけていませんでした。やっぱり野良犬のようでした。でもその犬は普通の野良犬のような殺気はありません。それどころか、足をひきずりながらこちらに近づいてきて、体を摺り寄せてきたのです。

===居候===

本当におとなしい犬でした。私も犬に持っていた怖いという感情は、この時点できれいに吹き飛んでいました。彼はゆっくり歩き出した私のあとを足を引きずりながらついてきました。でも、私の家ではこの犬を飼うことが出来ませんでした。父が喘息をもっていたため、犬や猫を買うことができなかったのです。彼は私の家の前までついてきましたが「ごめん、うちでは飼えないんだ」という私の言葉をまるで理解したように、私の前を通り過ぎどこかへ歩いていきました。なにか凄くさびしく感じたのを思い出します。
でも、彼とはすぐに再会することができました。近くの雑貨屋で居候をすることになったのです。ただ、首輪はつけてもらえませんでした。あくまでも居候です。それでも、私はうれしくて毎日彼に会いに行くようになりました。

===本当に野良犬か?===

彼は本当に利口な犬でした。「行け!」「来い!」なんかはもちろん、とにかくこちらの命令をよく理解して、そのとおりに言うことを聞いてくれました。そして、本当に私になついてくれました。居候している商店の人より、ほかの誰より私のことを慕ってくれました。何か、10年も付き合っている友達みたいな感じでした。
不思議だったのは、この犬がなぜこんなに人になついて、教えてもいないのに人間の言葉を理解できるのかということでした。答えは簡単でした。おそらく、この犬は以前誰かに飼われていて、捨てられたのだと・・。そして、たぶん、その主人を探して長いこと旅してきたのでしょう。

===突然の別れ・・・===

出会いが突然であったように、別れも突然でした。
ある日を境に、かれが居候先の商店から姿を消してしまったのです。もし、彼が飼い犬で、私の想像が正しければ、ほんの少しここで羽を休めてまた主人を探しに旅に出たのかもしれません。
でもそのときの私には一抹の不安がありました。それは彼が今は飼い犬ではないということ。もしかしたら保健所に連れて行かれてしまったかもしれないという、一抹の不安でした。
きっと彼はどこかで天命を全うしたと信じたいのですが、でも、不安がありました、ずっと。
人は誰も一生の後悔を感じることがあるかもしれませんが、私の場合彼に首輪をつけてあげられなかったことが、いまでも残念でなりません。

長々とすいませんでした。でもなまこさんの「家族なのに」を読ませてもらって、彼の事をまた思い出してしまいました。でも、彼との短い間の付き合いは、私の中では本当に楽しい思い出です。