其れは 其れは
    懐かしき
   古い 古い
    お伽噺


  寝るのが不得意な
   大人が耳にする
    宵物語


 美しき崇高なる
  神秘の翼を
 自らの意志で其の手で
  切り落とし

  人に恋した
   其れは
  人と結ばれた

  可笑しな話だね

  云わば、
   自分達が管理する
   奴隷の如き
   実験台の泥から生まれた人形に

   惚れるなんてね


  翼は其のまま
   近くの湖に沈められた

  湖に棲む人魚は
   其れは其れは大切に
   其の翼を抱えて
  水底で夢を見続けた


    陽の光が
 透き通った湖に差し込み
  空の上をよく見ると
   とても とても
    高い場所


 其処に憧れたそれらは居た


  自分が抱えているこれも
   本当はあそこに在ったのに
  何で捨てる事が出来たのだろう?

  
   こんなにも綺麗で
   何処にでも行けて
    

  …羨ましかった
   いつも、空を見てはため息をつき
   自分の姿を湖畔に映し
    嘆いた

  翼、此処に在るの
   これを誰か私の背中につけてください
  そうすれば きっと
   私も空の一族に迎え入れて貰えるはず

  多少は見た目が違うけれど
   ほら この翼
    同じだもの


  人魚は儚い夢を視る
 
  人魚は拙い知識の中を
   泳いで夢を視る

  
   無知とは
    無意味では無い
   無知から生まれる向上心は
    好奇心は
    憧れは

  
   変化を齎す時が来る

   時間は無限に在り
    不偏の存在である限り
    足掻く事に無意味は


     存在しない