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探偵・桐生一の調査メモ

元・歌舞伎町NO・1ホストから紆余曲折を経て探偵へ転身。
普段は知りえない日常の裏側を綴っていきます。

その数ヶ月の間、Y先輩とMさんの間は何も無かったかのように安定していました。

Mさんは元のプロダクションを除籍し、ようやく新しい事務所へ移ったようです。

僕は自分の指名客が増えてきたこともあり以前のようにMさんのテーブルに着くことは少なくなっていましたが
たまに着く機会に話を聞いて動向は把握していました。


そんな折、いつものように営業後にY先輩から誘われ食事に行き
その後、Y先輩宅へ向かった時に事件は起きました。

(ここから若干記憶が曖昧ですがなるべく破綻の無いように書きます)

Y先輩宅の前でタクシーを降り玄関に向かおうという時、ふいに後ろから
「おーい、Yく~ん!」と声を掛けられました。

振り向くと車の助手席のパワーウィンドウから身を乗り出す男性が。

角刈り、金のネックレス、薄いサングラスから覗く鋭い眼光。

『うわぁ、ヤ○ザだ…』

一目でわかる風体でした。

そのヤ○ザは助手席から降車してこちらへ近づいて尋ねました。
「どっちがY君?」

Y先輩は戸惑いながら
「僕ですが…どちら様でしょうか」と答えました。


「おお君かぁ。かっこいいねぇ。初めまして」
ヤ○ザはそう言うとニコリと微笑みY先輩の手を握り会釈しました。続けて、
「君、Mって子知ってる?」と訊きました。

Y先輩「あ、はい。分かります」

ヤ○ザ「僕は○○プロモーションの●●って云う者だけど、君ねぇ、業界のルールは守らないとダメだよ。
(Mを)勝手に移しちゃったでしょ。」

Y先輩「えっ、いったい何の話ですか?」

ヤ○ザの優しい口調にヤバい空気を感じたY先輩は知らばっくれようとしました。

すると一転、ヤ○ザは急に声を荒げて、
「おうコラ、ネタ挙がっとんじゃ。これ見てみぃ。」
そう言うとバッグからコピー用紙のようなものを出してY先輩に見せました。

恐らくY先輩とMさんのメールのやり取り等をプリントアウトしたものだったと思います。
Mさんが何らかの形で携帯のメールフォルダを抜かれたのでしょう。

ヤ○ザは確固たる“証拠”を突きつけられ動けなくなったY先輩の肩にがっちりと腕を回しました。

「ちょっと話があるから車乗ってね。君(僕)も証人だから一緒に来て」

抵抗できるはずも無いY先輩と僕は震える足で後部座席へ乗りました。

間もなく車は発進しどこかへ向かっていきます。

助手席のヤ○ザは携帯で誰かと連絡を取っているようです。

まさか自分が拉致されるなんて思っても見なかった(そんなのアウトロー雑誌の中の都市伝説だと思ってた)、
弱冠18歳の僕は恐怖の余り思考が完全に停止していました。


続きます。