ハンドメイド・レジンフィギュアの最大の敵は、
1mm未満の小さな小さな気泡。
レジン(樹脂)作品をハンドメイドで作る場合、硬化する時に発生しやすい小さな小さな「気泡」は大きな大きな大問題です。
今回は、かなり専門性の高い、技術的なお話しになります。これは同じような技法で作品を作られている方に多少なりともご参考になればと思って細かい話しになりますがご容赦ください。
私も当時、情報が少なく本当に大変だったと同時に、しかしネット情報のおかげでなんとか解決に向かったため、恩返しの意味も含めて私の経緯をお伝えします。
私のネコフィギュアのレジンは、ポリウレタン樹脂です。A液とB液を混ぜると、およそ180秒で硬化が始まるタイプで、15分後くらいにはカチカチになります。
このレジンの気泡問題は、数年にわたり悩みの種で、おそらく3年間くらいは試行錯誤をしたのではないかと思います。
気泡問題は大きく分けて2種類
問題の気泡には、2つのタイプがあり、1つはシリコーン型から空気が逃げきれずに溜まってしまった時にできるもの。
もう一つは、空気中の湿気がレジンに溶けたものが反応し、硬化する瞬間に発生する、超微細な気泡です。それはどうも炭酸ガスではないかと思われます。
これは化学的な知識がある訳ではなく、また正体が炭酸ガスなのか空気なのかはともかく、液体状のレジンが硬化するその間際に急激に発生する超微細な気泡が大問題ということです。
1つめの空気が逃げきれずに出来てしまうものは、シリコーン型のアングルや、空気の逃げ道を作ることで解決しますし、それは何とか方法はあります。
下記写真は、そのタイプの気泡でできた跡です。
大きな問題はもう1つの、硬化時に発生してしまう炭酸ガスの方です。
この気泡は本当に小さく、細かく、0.2mmや、0.3mmくらいではないかと思います。
下記写真はその微細な気泡で、非常に小さな泡が硬化する瞬間に急激に現れます。
当初は、この気泡ができてしまったものは即ボツとしていましたが、その後の研究でレタッチ=補修する技術もほぼ習得したので、そのレタッチについてはまた改めて書きたいと思います。
ネット情報がなければ、あと数年は解決できなかったかも。
この微細な気泡問題は、結果から言うと、「真空脱泡機」という機材を使うことで、ほとんど解決に至ります。
ほとんど、と言ったのは、シリコーン型によってとか、その日の湿度によってなど、まだ、完全には克服しきれてはいないからです。
しかしこの真空脱泡機にたどりつくまで、かなりの時間を要しました。
それでもネットで調べに調べて、同じようなレジン造形をされている造形作家さんが真空脱泡機の紹介をされていたのを発見して、初めてその存在を知りました。
そしてその後困ったのは、この機材は数万円から数十万まで、高価でありかつ種類もあるものの、一方どのようなタイプの真空脱泡機を選択すればよいのか情報があまりに少なくて非常に困りました。
真空脱泡機の説明と選択についてお話しします。
そもそも真空脱泡機は、もともと樹脂造形のための機材ではありません。「真空ポンプ」という本体があり、それはエアコン設置の工事などで使用するものらしいです。
そして「真空チャンバー」という真空の空間を作りだす容器をつなげて、その容器から空気を完全に排出することで、真空の空間を作りだします。
下記写真は私が購入した1台目の真空脱泡機で、右にあるのが真空ポンプ。左にあるアルミの鍋に分厚いアクリルの蓋を置いたものが真空チャンバーです。
実はこの真空脱泡機は、結局、私の用途ではパワー不足で、あまり良い結果が得られず、もっと大型でハイパワーのものを再度購入することになります。
なおこの一台目の真空脱泡機は、アマゾンで注文し、並行輸入で送られてきたものです。決して製品が悪いのではなく、「私の用途には出力不足だった」ということです。
しかしレジンフィギュア制作に適切な出力など、どうしても情報を探せなかったため、試してみるしかなく、その結果、出力不足がわかったということです。
メーカーは「Best Value Vacs」で、モデルは「RS-1」、排出パワーは84L/分(正確な情報が探せないのですが、おそらくこのくらい)。真空チャンバーは、直径25㎝11L。当時(2017年)は、63,000円で購入しましたが、今久しぶりに見たら55,000円で値下がりしてました。
なお、パワー不足というのは、チャンバーが完全に真空になるまでに2分近くかかってしまい、ここが問題になります。それではレジンのA液にB液を混ぜてから真空までに時間がかりすぎて充分に気泡を出し切る前に硬化時間になってしまいます。
しかし、そのことに気づくまでにもかなりの期間がかかりました。
それは微細な気泡がなくならない理由は、レジンの質の問題ではないのか。とか、シリコーン型の作り方の問題ではないのかなど、さまざまな要因を研究した結果、「真空になるまでの時間がかかりすぎるのでは?」に至るまでに時間がかかったという事です。
さらに、真空ポンプは高価なため、買い換えようと思っても、簡単に決断できるものではないので「どれにすれば良いのか」の研究をして、結局、自分が購入できる価格帯の中で最もハイパワーなモデルを選ぶことになりました。
それでも「それで充分なパワーなのか?」は分からないままでの購入でした。なにせ、レジン造形のための使用レビューなどは全くなかったので。
二台目の真空ポンプのメーカーは「「イチネンTASCO」。モデルは「 TA150RD」。パワーは排気速度:210ℓ/min(60Hz)・185ℓ/min(50Hz)。 約59,000円。私は東京在住で50Hzなので実質的には1分に185リッターの吸引能力というスペックです。
これは一台目の倍以上の吸引能力です。
また真空チャンバーは、ためしに一台目のものをつなげてみたらうまく使えたので、流用となりました。
今回は、同じ造形仲間の方が検討されている時に情報になるように、専門的な細かい話しまでさせていただくため、長くなってしまいます。
ただでさえ長い話にお付き合いいただき、ありがとうございます。しかしまだ続きがありまして、あまりに長いので、ひとまずここまでで前篇とさせていただき、続きは後編でお話しさせていただきます。
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