今回のサマーレイトショー『心中宵庚申』藤紫さま と鑑賞して参りました。



今まで見た「心中モノ」の主人公は遊女×庶民の男(←暴走タイプ)というパターンが多かったけれど、今回はめずらしく夫婦なのだ。



結婚してるのに、悲恋!?



やはりそこに立ちはだかるのは「嫁姑問題」なのでした。



夫、半兵衛は文楽(世話物)に出てくる男にしては、真っ当なヤツ。←余所に女を作ったり、借金まみれだったりしていない。
八百屋に養子に入っているが、元々は武家の出という血筋の良さ。


嫁、お千代は大百姓の次女で実はバツ2(半兵衛に離縁されるとバツ3)。しかも追い出されたときは半兵衛の子どもを妊娠中。




『上田村の段』


半兵衛が実父の十七回忌で出かけている間に、姑に追い出されたお千代は実家(上田村)に帰ってきました。
実家では、しっかりものの長女おかるが病気の父の看病をしつつ、切り盛りをしています。
父親は床に臥せており、さすがに体調が悪そうなので、出戻りの娘の心配をさせまいと、コソコソ姉妹で話しているところに、同じ村の金蔵(KY男)がしゃしゃり出てきて、「だから百姓同士オレのところに嫁いでいたらバツ3にならずに済んだのにな~。今度こそ親父さんに頼み込んで縁組させてもらおう♪」などと大声で浮かれていました。
おかるが「うっせー黙って失せろ!」てなことを婉曲に金蔵に言って、父親に気づかれないようにしていたのも虚しく、バカ金蔵のせいで千代が嫁ぎ先を出されたことがバレてしましました。



そこへ何も知らない夫、半兵衛が実家の静岡から大阪(八百屋)へ帰る途中、妻の実家(京都)へ立ち寄ります。
やけに冷たい義理姉の様子&里帰りしている上に引っ込んで出てこない妻。
のちに半兵衛は姑(養母)の陰謀によって嫁が追い出されたことを知り、自分の潔白を示すために自害しようとしました。


しかし、すんでのところで思い留まり「2人で大阪に帰ろう」とラブラブ復縁ラブラブ




アタクシが姉おかるだったら、「人騒がせな・・・勝手にやってくれよ。」とグチりたくもなります。





『八百屋の段』



鬼姑登場~おに
とにかく口うるさいオバチャンなのよねぇ。
でも、それで店を広げて商売繁盛しているのだから、やり手なんだろうと思うし、血のつながった甥ではなく、わざわざ半兵衛を養子に迎えて店を継がせるくらいだし、ただただ嫁が気に食わないだけで、それなりの分別はあるオバチャンだとは思うのだが・・・


「半兵衛、養母のあたしに隠れてコソコソ千代に会おうとしてるんじゃないの!まったく親の恩を忘れて嫁を大事にするとはなんて恩知らずなんだ。」とぶつぶつ文句を言います。
半兵衛もこれ以上養母に言われっぱなしというわけにもいかず、覚悟を決めました。


「今の状況だと、母上が嫁を追い出した鬼姑みたいな感じになっちゃって世間体が悪いので、一度千代を家に呼んで、私の口から離縁を申し付けましょう。」と、何とか養母を説得すると、養母も安心し養父と揃って出かけるのでした。
まぁ、出がけに出刃包丁を自分の喉元に突き付け、「母を殺すか嫁を取るか、2つに1つだからね!」と脅すことも忘れない←鬼母。



養母と入れ違いくらいで千代がよちよちと(嬉しそうに)やってきました。


「おいおい。お前何しに来てるんだよ~。鬼母に見つかるだろ!」と半兵衛が言うと、
「え~。お義母さんがニコニコしながらやってきて、誤解してたみたいで、苦労かけて悪かったね。早く家に戻っておいでって言うから来ちゃった音譜ということらしい。


図ったな、鬼母・・・


半兵衛は言いにくそうに、「実は離縁しなければならない」旨を話すのでした。
その時には半兵衛の心は決まっていて、「親が許してくれない相手ならば心中して、来世で一緒になろう。もう今日のうちに2人で出て行ってやる!」だったのです。



2人で家を出る間際、
「このままあなたから(家を)去れって言われたままでは、来世でもあまりに気がかりだから、『去らぬ』って言ってよ。」と千代が言えば、
「まったく、今夜は5日庚申(こうしん=かのえさる)なんだし、夫婦連れで家を去る(手に手を取ってこの世を去る)と思えばいいじゃないか。」と半兵衛が答える。



あぁ、ラブラブカップルめあっつー




『道行思ひの短夜』



手に手を取って東大寺にやってきた半兵衛とお千代。
黄色地に格子柄の着物でペアルックラブラブ



紅ずきんのブログ(別館)-文楽。  ←左下の2人が半兵衛と千代。



いよいよ夜が明けそうになり、人目につかないうちに心中しなければなりません。
千代も覚悟を決めて、「先に私を殺してください。」と念仏を唱えたものの、
「ちょっと待って。」と引きとどめる。


「何だ、急に命が惜しくなったのか?卑怯者め。」って、そんな言い草はないじゃないかよ。


「違うのよ。自分の命は惜しくないけれど、性別も分からぬお腹の中の子どもが不憫で・・・」と2人して泣き叫ぶ。


子はかすがいと思い留まるのかと思いきや、「あすは来世で一緒なのだから、しばしのお別れだよ。」と一思いに半兵衛は千代を刺し殺すのでした。


そのすぐ後に腹を切って自害する半兵衛。←超絶苦しそう・・・Queenly
朦朧とする意識の中で、千代に覆いかぶさり息を引き取ります。




静かな最期。



でも、2人は超ラブラブラブ←何しろ抱き合って死んでいるわけなんで。




特に、今回の人形は最初から最後まで半兵衛が(桐竹)勘十郎さんで、千代を(吉田)蓑助さんがやっていたので、(それも間近な席から鑑賞できたのもあり)尋常ならぬ臨場感。
なんか蓑助さんの遣う女形って、不幸であればあるほど凄味が増すっていうかね。そこがアタクシのツボなのだ。



心中モノにしては、わりとスッキリした後味でした。



唯一の悪者「鬼姑」が何故そこまで嫁を憎んでいたのか、釈然としないところはありましたが、彼女のキャラも立っていて面白かったので、良しとします。


(ちなみに藤紫さまと「武士の子どもを養子に取るやり手婆な姑にとって、百姓出身の嫁というのが気に入らなかったのでは?」と話し合ってみました。もしくは触れられてはいないけど、バツ2になるというだけの不幸要素を可愛い顔した千代が持っているか・・・)



今回は第3部のサマーレイトショーのみの鑑賞でした。
アタクシの体力&集中力にはちょうど良いプログラムでしたわパンダ