旧優生保護法と除斥期間 | 弁護士の労働問題解決講座 /神戸

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弁護士の萩田です。いつもありがとうございます。

最高裁判所は、旧優生保護法にもとづいて障がい者に不妊手術の強制していたことについて、立法そのものを憲法違反とする判決をくだしました。

強制不妊手術の規定は1996年に廃止されましたが、それまで半世紀にわたってこのようなことが行われていたというのは、恐るべき人権侵害行為です。
私が大学生のころから、憲法や行政法の教科書・講義では、優生保護法や伝染病予防法などの強制措置について問題点は指摘されていましたが、ハンセン病などの訴訟が始まるのはその後の時期からでした。実際の司法の動きが遅かったと痛感します。

この問題については、私の生半可な解説より、専門家の解説があるのでそちらを参考にしてほしいです。

さらに最高裁判決では、除斥期間を適用しなかったことが話題になりました。
今回はこちらを解説したい。

除斥期間とは、時効と同じように一定期間権利行使をしなかったら訴えることができなくなるという制度です。
これについて、最高裁判決は、2つの重要な判断をしました。

1つめは、除斥期間は著しく正義・公平の理念に反するときには適用されないという考え方を再確認したことです。
不妊強制手術については、国が身体拘束や欺罔などの手段を含めて行うことが許される通知を出すなど積極的に手術を行うなどしており、いわば積極的な加害者です。このような権利行使を妨害してきた者が除斥期間の主張をすることは著しく正義・公平の理念に反すると判示しています。
除斥期間は弁護士実務でも大事な論点であり、どういう場合に除斥期間の主張が許されないのかガイドラインになると考えます。
2つ目は、除斥期間は当事者が主張しない限り裁判所は取り上げないとしたことです。正義・公平の理念から考えると、主張していないものを裁判所が積極的に取り上げることは不当であると裁判所が考えを改めたわけです。
最近の民法改正(時効制度をふくめて)を意識したのかもしれません。