弁護士の萩田です。いつもありがとうございます。
「コロナワクチンの職域接種で副作用が出た場合の労災扱い」のブログで読者からまたご意見がありました。
「労災にならないのは分かったが、何の補償もないのか?」
・・・すみません。説明不足でした。
たしかに職域接種での副作用では、原則労災認定されないようです。
しかし、薬の副作用一般については、補償制度が設けられています。
健康被害が予防接種によるものであると厚生労働大臣が認定したときは、予防接種法に基づく救済(医療費・障害年金等の給付)が受けられます。
これが、予防接種健康被害救済制度というものです。
これができるまでには、長い前史があります。
予防接種では僅かな確率で、死亡または重篤な神経系の副作用が生ずる可能性があります。
以前は、予防接種を義務づけられていたのに、予防接種によって一定割合で発生する重篤な副作用を救済する法律はありませんでした。被害者が放置されてきたのです。
これにたいして、東京を中心に、予防接種被害訴訟(国家賠償請求)が提起されて長年の裁判闘争があったのです。
日本国憲法29条は財産権の保障を定めています。
その3項に、私有財産は正当な補償の下にこれを公共のために用いることができる、と定めています。
私有財産でさえも公共目的で損害を被った方に対しては憲法によって補償されるのであるから、より重要な法益である生命身体の被害が予防接種という公共行為によって生じる場合にも憲法上の補償の趣旨が及ばないのは不当である、という考え方が背景にあります。
そんなことがあり、予防接種については、義務ではなく、努力義務になり、また、健康被害救済制度も充実されていったのです。