契約期間途中に解雇された裁判 | 弁護士の労働問題解決講座 /神戸

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弁護士の萩田です。いつもありがとうございます。
 
労働裁判実務で注意すべき判決を紹介します。
 
・最高裁第1小法廷R1年11月7日判決
[事案]
1)原告は1年間の有期雇用契約をH22~
  H26まで続けていた。
  被告は原告をH26.6.6、雇用期間
  中途で解雇した。
2)原告代理人は、原告の契約内容をH26.
  4.1~H27.3.31の1年間と主
  張した上で、契約期間中とでの解雇は無
  効であると主張した。
3)被告は、控訴審(原審)になって、雇用
  契約はH27.3.31で終了している
  と主張したが、裁判所は、時期遅れ、と
  いって却下した。
4)地方裁判所、高等裁判所では、「解雇は
  無効であり、原告は被告との間に雇用契
  約上の地位がある」と判示し賃金支払を
  命じた。
5)これに対して、被告が上告した。
[判決要旨]
・原判決が、契約期間の満了により本件労働
 契約の終了の効果が発生するか否かを判断
 することなく、原告の労働契約上の地位の
 確認請求及びその契約期間が満了した後で
 あるH27.4.1日以降の賃金の支払請
 求を認容した部分は是認することができな
 い。
・最後の更新後の本件労働契約の契約期間は
 H27.3.31までであるから、第1審
 は、原告の請求の当否を判断するに当たり、
 この事実をしんしゃくする必要があった。
・つまり、原審は、最後の更新後の本件労働
 契約の契約期間が満了した事実をしんしゃ
 くせず、上記契約期間の満了により本件労
 働契約の終了の効果が発生するか否かを判
 断することなく、原告の請求を認容してお
 り、上記の点について判断を遺脱したもの
 である。
・破棄差し戻し

◆お分かりでしょうか?
有期雇用契約を中途で解雇(本件ではH26.
6.6)するのは、よほどのことがない限り
違法無効です。
ところが、かりに中途解雇が無効となっても、
結局はその後(本件ではH26.3.31)
で有期雇用契約が満了してしまい、それ以降
(本件ではH27.4.1~)は雇用契約が
残っているとはいえません。
賃金請求も認められません。
その点について、裁判所が見落としていたこ
とを、最高裁が強く批判しているのが、この
裁判例です。

◆原告側弁護士はどうしたらよかったのでし
 ょう?
・有期雇用契約については実質的無期契約で
 あった・雇用更新の期待があった(労働契
 約法19条)
・無期転換権(労働契約法18条)を行使した、
 ことをあげて、雇用期間満了後(本件では
 H27.4.1~)も雇用契約が継続して
 いる
と主張すれば良かったのです。
中途解雇の有効性がもともと裁判の争点です
が、法律上は、最高裁がいうように、雇用期
間満了の問題も裁判で争わなければならなか
ったのです。
争点に熱中するあまり、法律全般を見渡した
主張をおろそかにしてはなりません。

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(今回のブログは、メールマガジンの転載で
 す。大事な裁判例なので転載しました)
弁護士のテクニックなども盛り込んだおもし
ろい記事を予定しています。
次回は6月17日(水)配信予定です。
ご期待ください。