法律用語の多義性(その2) | 弁護士の労働問題解決講座 /神戸

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弁護士の萩田です。いつもありがとうございます。
 
「労働法」という法律はありません。
 
労働契約法、労働基準法、労働組合法、労災保険法(労働者災害補償保険法)、労働安全衛生法など、たくさんの法律があります。
そして、法律用語は、法律ごとに意味が異なるのです。
 
今回は、「労働時間」です。前回の「労働者」より難しい。

2 労働時間
 
労働時間は、労働基準法・労働契約法の考え方と、労災保険法の考え方とで、若干異なります。
 
なぜかというと、やはり、目的が異なるからです。
 
労働基準法・労働契約法の「労働時間」は残業代請求などで問題となる中心概念です。
 
対して、労災保険法では、労働時間そのものが問題となるのではなく、労災認定をするときに業務に起因しているかの要件を判断するさいの要素になります。
 
つまり、実践的な役割がことなります。
 
労働基準法・労働契約法の「労働時間」は、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まります。
この定義に該当しなければ、残業代請求が成り立ちません。
 
労災保険法の「労働時間」は、業務起因性の判断要素の1つなので、仕事の加重程度や困難さなどの評価が入り込みやすい概念です。「客観的に決まる」といわれる労働基準法等の「労働時間」とはまったくことなるのです。

3 まとめ
 
法律用語というのは、労働者、労働時間、で説明したように、多義的です。
 
それは、法律が、労働者保護とか労働組合保護とか、それぞれ異なる目的を持ったものだからです。
 
それを理解した上で、弁護士は事件処理を進めていきます。