(株)QPS研究所が打ち上げを予定していた小型SAR衛星の1号機が昨日インドの『サティシュ・ダワン宇宙センター』より打ち上げられ、無事正常な軌道に乗ったことが確認されたとのことです。

 

 

打ち上げについては、FM福岡のMORNING JAMの中で中島浩二(ナカジー)が以前から話をしており関心を持っていたのですが、無事打ち上げが成功したという記事を見たので久しぶりに好奇心が沸き起こり少し調べてみました。

 

たった今(12/12 10時過ぎ、ナカジーが衛星が地上との交信が成功したとそうです、と番組の中で言ってました。)

 

昨日は福岡県庁1Fロビーで打ち上げのパブリックビューイングが行われ、小さい子と関係者を中心に盛り上がったようです。

地元振興という意味で非常にいい企画だと思います。

 

ところで、どっかTVで中継したところはあったのでしょうか。

 

※QPS研究所とは。    Q-Shu Pioneers of Space

  2005年に九州の地に宇宙産業を根差すことを目指して、九州大学名誉教授の八坂哲雄 

  さんと桜井晃さん、それに三菱重工業株式会社のロケット開発者の舩越国弘さんにより創

  業されたそうです。

 

衛星ビジネスというと、主体は政府や大企業が中心というイメージですが、九州のしかも中小企業が主体となって実施している点が非常に画期的で面白いところです。

 

 

※SAR衛星とは。       SAR:Synthetic Aperture Radar(合成開口レーダー)

  SAR衛星は、衛星が強い電波(マイクロ波)を発信し、地表で跳ね返ってきた電波を衛星に

  搭載されたセンサーがとらえることにより、地上を観測します。そのため、夜間でも観測が

  可能です。

 

   それに対し、光学衛星は、光の反射を光学センサーでとらえることにより観測するた

       め、夜間は観測ができません。ただ、精度的には光学衛星の方が大分上です。

       Googleマップを思い浮かべると判りやすいですね。

   SAR衛星とは別に、物質が発生する弱い電波(マイクロ波)を観測するマイクロ波衛星も

   あり、こちらは降水量や海面温度などを調べるの使われます。

 

このように光学衛星が高解像度の観測を得意とする反面、悪天候や夜間には観測できないという欠点があります。

 

一方のSAR衛星は、光学衛星ほどの観測精度はありませんが、悪天候や夜間にも観測できるというのが利点となります。

 

今回の衛星は、常時1Mの分解性能を持ち、観測精度も10分に1回という頻度であり、ともに他社の衛星を大幅に上回る性能です。

 

これが実現できたのは、QPS研究所が開発した小型衛星用の大型軽量アンテナによるものです。

 

         <<宇畑(SORABATAKE) 2018/6/5より転載>>

 

今回の1号機(イザナギ)に続いて、来年前半には2号機(イザナミ)の打ち上げを予定しており、4年後には全36機体制とすることにより、世界中のほぼどこでも約10分間隔で観測するということが実現される見込みです。

 

イザナギ、イザナミという名前についても、宇宙開闢(かいびゃく)を創造させる命名でこの事業にかける決意を現わしているように思います。

 

※現在のSAR衛星の主な利用方法は次のようなものです。

  ・海上の船舶監視

  ・地盤沈下の監視

  ・森林伐採監視

 

今回の1Mへの観測精度向上により、さらに利用範囲の拡大が見込まれます。

 

しかも10分おきに観測可能であれば、ちょっとした変化でも観測が可能ということにもなり、その活躍範囲は非常に大きなものになると想定されます。

 

日本企業、しかも九州の中小企業の集団が、世界中を常に観測できる仕組みを作るりあげるということは、日本企業の技術力の凄さを改めて示したと言えるのでないでしょうか。

 

ただ、なんで打ち上げがインドなんだというのは疑問ですが。

 

費用面とかで、日本のロケットの利用は難しかったのでしょうか。

 

また、この観測精度を生かした新たなビジネスの機会を日本企業に提供できることになります。

 

一覧にあるように世界中で小型衛星の利用が考えられており、当然各国でその情報を利用した新たなビジネスが展開されるものと思われます。

 

GAFAのようにこの分野でもアメリカ勢に独占される可能性もありますが、基盤データを日本企業が提供するのですから、その情報を利用した独自のサービスを世界で展開する日本企業が現れれて欲しいと思います。

 

 

本来の利用ではないと思いますが、現在の国際情勢(北朝鮮や中国の脅威)を考えた時、スーパーコンピュータとの組み合わせにより日本の安全保障面での利用も十分考えられるのでは、と思います。

 

 

まだ1号機が成功したばかりですが、今後この事業の進展には多くの人・企業が注目していってほしいと思います。

 

 

<2019/12/15追記>

本日の読売新聞に経団連が『「衛星データが大きな鍵を握る」として、宇宙開発を加速させるよう近く政府に提言する。』と出ていました。

 

QPS研究所の衛星で取得できる膨大なデータを活用するためには、高速大量データを扱えるスーパーコンピュータの活用も必要になるでしょうが、日本で不足しているソフトパワーの活用をはかるという観点からも衛星データの活用方法を考えて行く必要があると感じます。

 

真っ先に車の渋滞回避等が考えられているようですが、上空から見て1Mという認識精度を考慮するとさまざまことができると思います。

・動物保護の観点から比較的大きな動物の行動把握(像やサイ等)

・〃             小さな動物の群れでの行動把握(これができれば素晴らしい)

・上記ができる前提で、災害時の人の集団の観測 等々

色々可能かと思います。