今日も帰りが10時をまわってしまった。
しかしまだ早いほうだ。
いつもならまだ会社にいる頃である。
だが今日は違った。
特に理由はないが、9時ジャストに帰ると決めたのは昼飯を一人で食べているときだった。
21時と同時にデスクを整理しアウターを羽織るまで僅か20秒。
そして次の瞬間、隣の上司に「お疲れ様でした」の捨て台詞。
デスクに座っている彼が僕を見ようとしたときにはもう遅い。
彼は僕の背中しか見えなかったはずだ。
自分だけ先に帰るという行為は幾つになっても気まずいものだ。
中堅所になった今でもこの行為をするときは初心に帰らざるをえない。
本日、自分よりも先に帰った上司は「今日7時半にきたからさー」
「今日12時間働いたから」の保険活動をしてからの帰宅。
失笑の渦。
しかし、今日の僕のとった戦略は彼のものとは全く違う。
普段の態度とタイミングの妙技、そして一瞬のスピードが勝敗を分けたのだ。
まず20秒で身支度を整える。
「隣に上司がいるのだから気付かれるのでは?」と思われがちだが、ココは勇気を持って迅速かつ勢いで切り抜けろ!!
ココからは、自分の普段から真面目を装っている勤務態度を逆手に取ったリアクション的な行動である。
身支度を整えた後は少し強めの「お疲れ様でした。」
ここは唯一自分の意思を言葉で表現できる名場面だ。
悔いの残らないように大事にいきたい。
そして、ここで上司はようやく自分の行動に気が付く。
「えっ?⇒アウター着るの?⇒帰るの?⇒俺より先に? 」
このような順序を踏んで彼の頭は整理される。
この間時間は五秒もないだろう。
しかしこれより先に僕は地面を駆け出す。
そして少し足早に席を離れる。
最後に強くドアを閉める。
このドアを閉めた後のわずかな余韻こそが、己の心意気だと思っていただいても構わない。
ドアを強く閉めすぎると明朝から周りの視線が気になるので、 上司だけに「あっ、強く締めたな」と伝わるぐらいがベストである。
取り敢えず以上を確実にこなせればかなりスムーズに帰ることが出来るのは間違いないが、これら一連のことを受動的にしてはならない。
「俺は今日は早く帰るのだ」、「誰も俺を止められない」、「お前には俺を止めるのは不可能だ」といった強い意志をもって行って欲しい。
すると上司は思いを察してくれるはずだ。
「はて?いつも真面目な彼の鼻息が荒かった。」
「さては何かあったな?」
「女絡みか?」
「引き止めるのは野暮だな・・・」
「俺も若い頃はいろいろあったな・・・」
「今日は一杯引っ掛けて帰るか。」
これで明日は気まずくならないだろう。
さぁ、次は君の番だ。
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