ニシンそばについては、以前少し書いたが、筆者にとって特別な食事であるということは、その時には書かなかった。
筆者の育ちは大阪である。
すなわち、家族が滞在していたのは大阪であった。
その大阪界隈で、毎週一度は、家族で蕎麦屋に立ち寄ったものだ。
大阪なので、蕎麦屋というよりは、うどん屋だ。
筆者の好物はきつねうどんだったので、きつねうどんばかり頼んでいた。
これは大阪らしい注文だろう。
一方、父親は、いつもニシンそばを注文していた。
その時は、なぜ父親がニシンそばばかり注文するのかなど、考えも及ばなかった。
後になって気が付いた。
京都の人だったからだ。
その当時、筆者は小学生で、ニシンそばが京都の蕎麦であるとは知る由もない。
今時、インターネットで調べると、ニシンそばは、北海道と京都の名物である。
北海道の方は理にかなっていると分かっても全然知らない。
京都では、今更ながらに見渡してみれば、町のあちこちで見かける。
用事がなんだったかは忘れたが、父親が筆者と兄を連れて京都に来たことがあった。
兄弟そろって小学生のころである。
その時、なぜかみんなニシンそばを食べる羽目に会ったのだ。
まさかと思うが、父親の知っている店だったのだろうか。
「ここのニシンそばはうまい、一度食ってみろ」、とでも言わんばかりの勢いだったと記憶している。
その情景は、なぜだろう、未だに生々しく思い出す。
夜だった。
そして外は寒かった。
京都に来ると、いつしかニシンそばを食することが多くなった。
そして好物となった。
好物となったのは、父親の味だからということが折り重なっていることは間違いない。
ニシンそばを食べると、父親に再び出会った様な気さえする。
最近では、長女と一緒に食べたのが大変おいしかった。
とてもおいしかったので、母親もわざわざ連れて行った。
最近と言っても2018年の1月のことで、京都出町柳の割烹・和点である。
ダシは最高、ニシンの大きさが全然違う。
はたと気が付いた。
そうそう、家で作る年越しそばも、ニシンそばが普通だったではないか。
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