スパゲッティの太さやゆで具合などについて書こうという訳ではない。

そのレシピについては、別途いくつか書いて行くこともあるだろう。

アルデンテだどうだというのも、別の話である。

 

 

そうではなくて、ここでは、メーカーの話をひとつしておきたくなったのだ。

どれが一番うまいのだ、という話である。

 

バリラ(バリッラが正しいBarilla)、ブイトーニ(Buitoni)、最近ではディ・チェコ(デ・チェッコの筈だが... De Cecco)も知られるようになってきた。

 

 

イタリアには、他にもメーカーが山ほどあって、イタリア人に言わせると、どれもこれもおいしいと言う。

確かにそう言ってしまえばその通りだし、作るスパゲッティのソースによって、どのスパゲッティが合うという相性もある。

ソースによってはスパゲッティは合わないが、他のパスタなら合うということも多い。

 

北イタリアでは、バリラが一番普通で、どこでも見かける。

ところが、これが南の方に下ると事情は異なる。

 

イタリア中部にアシジという小さな街がある。

聖フランシスコというキリスト教の聖人の街で、ウンブリア地方にある。

そこにちょくちょく出かけた。

 

 

中世のままの姿を残したこの街は丘の上にあり、街に通じる道から見たその姿は壮観である。

その道沿いのホテルに泊まった時のことだ。

 

夜に到着したので、ホテルのレストランで食事を済ませることにした。

ホテルのオヤジが、スパゲッティ・カルボナーラをしきりに勧める。

メニューに載っている他のパスタは食べなくていいという強引さである。

イタリアのオヤジがそこまで言うからには、うまいに違いないと思って、言うにまかせた。

 

既にイタリアのスパゲッティブランドを色々試した後だったが、それ以上においしいスパゲッティを食べたことは、後にも先にもその時だけなのである。

カルボナーラがおいしかった理由は、どこかで又別に書こうと思っているが、とにかくスパゲッティ自体のうまさが格別だった。

 

「いったいどこのスパゲッティなのですか。」とオヤジにきくと、ウンブリア地方のスパゲッティで「スピガドーロ」だという。

イタリア一だと自慢げに言うのである。

筆者の住んでいた北イタリアでは聞いたこともないスパゲッティだった。

 

 

さて、何年も経って、再びアシジを訪れた。

10年は経過していただろう。

当然、スピガドーロのスパゲッティを食べようとして同じホテルを探した。

ところが、どうしたものか見当たらない。

まるで狐につままれたかの如しである。

 

他にもかなり色々回って尋ねたが、スピガドーロのスパゲッティを出すところはなかった。

聞くところによると、経営がうまく行かずアメリカ企業に買収されてしまったと言う。

 

アメリカ企業かどうかは不確かだが、いずれにしても、もう昔のままではないらしい。

1822年来の歴史的なパスタ屋さんだったのに、昔の味を出せなくなったと言って、地元の方が嘆いていた。

 

名だたるパスタ屋の中で一番古い。

創業:
スピガドーロ   1822年
ブイトーニ     1827年 
バリラ       1877年
ディ・チェコ    1886年

 

調べてみると、2002年に倒産していた。

2014年には他の会社(テーザ有限会社)がブランドを買い取り、ブランドが復活した。

ということは、ブランドは昔のものだが、中身は違うものになっている可能性が高い。

スピガドーロは、今やオンラインショップでも買うことが可能になったので、果たして、昔のままの味なのかどうか、一度試してみようと思う。

 

スパゲッティの話から少しそれる。

一度だけ、イタリアのお母さんが、手作りのパスタをふるまってくれたことがある。

 

セモリナ粉と卵をこね合わせて作ってくれた。

失礼ながら、イタリアのお母さんは樽みたいに太った方が多い。

しかし、腕も当然太いので、こういう時にはもってこいだ。

 

それは、このスピガドーロをはるかに超える天にも昇る様な味だった。

今みたいに工場でパスタを量産していない時代のイタリア人たちは、これを毎日食べていたのか、と思うと気が遠くなる様な思いだった。

「これが本物のパスタなのか!」といった思いで食べたものだ。

 

もはや、自分で作る以外、過去には普通のイタリア家庭のパスタであった極上パスタを食べる機会はなくなってしまったのではあるまいか。

 

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