クァルテット風雅は、秋吉台音楽コンクール、宗次ホール弦楽四重奏コンクールでともに第1位、このサルビアホール・クァルテット・シリーズにもすでにデビュー済み。実力はすでに折紙つき。
 



プロジェクトQには第22章・第23章と2年連続の参加ということで、公開マスタークラスからトライアルコンサート、本番と、その成長ぶりをつぶさに見てきた若手クァルテット。

プロとしての成人の証明ともいうべき今回の出演は、『宗次ホール弦楽四重奏コンクール優勝記念』と銘打ったもので、まさにここまでの成長の証し、集大成ともいうべきコンサート。プログラムも、ハイドン、バルトーク、ベートーヴェンと、弦楽四重奏曲の王道、ど真ん中の作品を取り上げていて実に堂々たるもの。
 



ハイドンは、とても躍動的。古典派的な構築が保たれていても、とても自由で開放的な舞曲組曲であるかのよう。作曲者がエステルハージ家の拘束から解き放たれてロンドンへと勇躍した時期の曲にふさわしい。プロジェクトQのマスタークラスで小栗まち絵先生から「短調なので"点"は軽くてはダメ」と直言されていたシーンが思い浮かびます。彼らにとっても大飛躍の演奏であると同時に若い感覚がはち切れんばかりに躍動する出色のハイドン。

次のバルトークは、新生の音楽。その若さあふれる集中力とバイタリティを全身に浴びるだけでも大興奮ですが、そこには《出発》への確かな覚悟を感じます。この作品は、無調から新古典への回帰といったように言われますが、むしろ晩年の作風への原点のような作品。アーチ型の対称的な5楽章構成などが典型的で、エキゾチックな激烈さよりもずっと普遍的で、しかも、各パートが鮮烈に切り結びながら、その中にひとつの確かな中核がある。覚悟あふれる演奏に、バルトークの本質に覚醒させられた気がして、心から楽しめました。

バルトークが今夜の白眉かと思ったのも間もなく、新鮮極まりない「ラズモスキー」を聴かされて、これもまた真っ向から風を受けるような爽快さを味わいました。ベートーヴェンの野心、自らのプライドを賭けた挑戦というような音楽がまさに現前で疾走していく。古典とか成熟といった名演の世界とは一線を画すような若々しさがあふれています。

振り返ってみれば、プログラムはいずれも大作曲家の壮年期、それぞれの個性を確立を象徴するような作品ばかり。これから打って出ていくというような覚悟と高揚が聞こえてくるような演奏でした。成長の確かな軌跡というものが見えるとともに、前に向かっていく毅然とした勢いをというものを感じるのです。

いま一番応援したい若手演奏家の筆頭に挙げたい。とにもかくにも応援したくなる演奏でした。

 



サルビアホール クァルテット・シリーズ206
宗次ホール弦楽四重奏コンクール優勝記念

2026年4月24日(金)19:05
横浜市鶴見区民文化センター サルビアホール
(C−9)


ハイドン: 弦楽四重奏曲 第59番 ト短調作品74−3「騎士」
バルトーク:弦楽四重奏曲 第5番 Sz.102

ベートーヴェン:
      弦楽四重奏曲 第9番ハ長調 作品59−3「ラズモフスキー第3」

(アンコール)
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第6番より 第1楽章


クァルテット風雅
 ヴァイオリン:
  落合真子
  小西健太郎
 ヴィオラ:
  川邉宗一郎
 チェロ:
  松谷壮一郎