「……で、ほんとにここに結晶があるわけ?」


あの後、この世界にも結晶があると言うハルに連れられ、街の地下通路までやって来たロアが、訝しげな表情を浮かべながら尋ねる。



「んもう、さっき妥協したんじゃなかったの!?」
「"妥協"は。でも"信用"はしてない」
「まったく……。あ、ほらあったよ。あそこ」
「え?」


ハルが指差した方にある小さな広場のような所を見てみると、確かに、いつぞやに見たあの結晶が鎮座していた。
すかさず近付こうとしたロアだったが、ハルに止められる。


「待って。ちょうどいいから試して見よっか」
「何をだ?」
「攻撃が効かないかどうか。君がうっかり近付いて吸収でもしちゃったら、確かめようがないだろ?」
「うーん……否定はしない。でももし手加減でもしてみろ」
「わかってる。その時は煮るなり焼くなりお好きにどうぞ」


ハルは笑いながらそう言うと、懐から自身の武器らしい鞭を取り出す。
よくある短い物ではなく長い鞣し革タイプのそれで、何故か先端が緑色に染められていた。
後で本人に尋ねてみると、『全部茶色じゃ味気ないだろ?』とのことだった。


「それじゃ――――いくよ」
「!」


戦闘の構えを取ったハルから物凄い"気"を感じ、ロアの体がビリビリと震える。

ハルはそれには構わず、怒涛の攻撃を浴びせていった。
その攻撃は、決して手抜きではなく、本気だった。

数分間、ハルは結晶と格闘していたが、やがて流石に疲れたのかその場にへたり込んでしまった。
結晶には傷一つ付いていなかった。


「ね? 言ったろ? 破壊できないって」
「……そのようだな……」


ロアは複雑そうな顔をしながら言った。


「さぁ君の出番だ。ほんとに吸収出来るのか、やって見せてよ」
「……仕方ない」


はぁ、と溜め息を吐くと、ロアはゆっくりと結晶に近付き、それに触れた。
途端、勢い良く黒い霧が立ち上り、やはりロアの身体に吸収されていった。
それと同時に、結晶も消滅する。


「はっ……は……」
「本当だ……跡形もなくなってる……気配もない」
「う……」
「ロア!?」


急に膝をついたロアに、ハルが駆け寄った。


「大丈夫!?」
「平気だ……ちょっと、眩暈がしただけだから」
「ほんとに?」
「大丈夫だから離れろ! ……ったく」


埃を払いながら立ち上がると、ロアはハルをじっと見た。


「何?」
「何って、次は何処だよ。案内するんだろ?」
「へ? ……ああそうだったね。次は別の世界になるんだけど……移動手段は持ってるかい?」
「あるのはある。お前は?」
「あるよ。でも僕にしか使えなくてね。だから」
「……世話の焼ける……。俺は別に大丈夫だからいいけど、何かしらの対策は自分で取れよ、そこまで俺は面倒見切れないからな」
「何の対策?」


キーブレードをキーブレードライダーに変形させ、それに乗り込んだロアに、ハルが尋ねる。


「何って……闇のだよ」